『トップ・シークレット⑨』発売を記念して、あんのまるさんにスペシャルインタビューを実施。
すべてが秘密で超キケンなこのシリーズが、つばさ文庫で発売されるまでのここだけのお話や、
発売中の角川つばさBOOKS『100億円求人』の制作秘話も大公開!
内容はすべて最高機密情報!
もちろん、秘密を守る仲間のみなさんなら、守れますよね?
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STAGE1 『トップ・シークレット』大解剖!
・まずは誕生秘話から!
――この8月に完結巻をむかえた『トップ・シークレット』は、最高にクールなスパイミッションストーリー!
どんなきっかけで、この本を書こうと思いましたか?
実はここだけの秘密なのですが……まず、いまから十数年前のお話をしたいと思います。
わたしは小学2年生のときに「児童小説家になるぞ!」と決意をして、小学4年生になったころに、小説賞への応募をはじめました。
その当時のわたしは、「世界の秘密機関のスパイになったら、こんなミッションをしてみたい」「不思議な力を持っていたらこんなことをしたい!」 と、想像してわくわくしていました。
それから10年ほどの時が流れた、大学生のとき。ある日とつぜん、ナノとレオの登場する【差出人不明の手紙】がポストに届いて――もうおわかりですね!
――さっそく「ここだけのお話」をしましょう。実は応募原稿は、フランスで運動会をするお話だったんですよね。
はい。シャルルやマキもはじめから出ていました。実はこれ、本にはならなかったのですが、実際の「トップ・シークレット」シリーズの2~3巻のあいだごろにあたるストーリーでした。届いた手紙のなかには、本にできていないできごともたくさんのっているんです。
本にするにあたって、ナノとレオのはじめてのミッション――車を運転して、飛行機から飛び降りて、という話のほうを1巻目にしたんです。
ただ、物語の1ページ目「警告 この本を読む前に」の部分は、応募原稿から実際に本になった『トップ・シークレット』の1ページ目まで、ずっと変わっていないです。
ここは、ひたすら楽しい、さらっと読めるけどなんか心に残る、とにかく楽しい話を書きたい!と思って書いたので、それがすごい反映されている部分だなと思います。
・書きたいのは「わくわく」する物語
――はじめてお話を読んだときも、まず1ページ目が最高に魅力的でした!
そんなあんのまるさんは、小学生のころはどんな作品が好きでしたか?
いろんな本を読んでいました。特に、「ここじゃない世界」に没入できる作品や、舞台がリアルで「そこに行きたい!」と思える作品が好きでした。「トップ・シークレット」シリーズを書くときも、そういうところを大事にしているかもしれません。
――なるほど! 確かにそうですね。
『トップ・シークレット』も『100億円求人』も「本当にいまわたしたちが生きている世界とつながるかもしれない」。そんな“現実世界にちょっとつながっているような感じ”は意識して書いています。
物語に没入はできるけど、でも読み終わっても終わりじゃなくて、自分ももしかしたらそちら側に行けるかもしれない。そんなちょっとした「希望」みたいな感じです。
――「行けるかも」が大事なんですね。
そうですね。「そういうことがあるかもしれない」みたいな「わくわく」を残すことを大切にしています。本当にスパイ学園からの手紙が自分にも来るかもしれない――。
実際にわたしのもとにも、ある人物からの「手紙」が届いていますからね!
・こんなお話も大好き!
――どのお話も、大がかりなシーンが多いことも魅力です。好きですか?
大好きです! 小学生のころ、毎年やっていたアニメ映画をよく見ていました。そういう映画の舞台の「その映画のためだけに作られて、中でどれだけあばれまわって壊しても大丈夫」なところが多分好きだったと思うんです。
爆発とかも大好きです。自分の世界を変えるくらいの大きなイベントが景気よく起こる、そんな派手なお話が好きなんです。「非日常」が好きなところと近い感覚かもしれません。
「100億円」のように、出てくる数字も大きければ大きいほどいいと思っています。
――ナノやレオ、ほかの登場人物たちも、みんな生き生きとしているところが素敵です。
お話のなかで人物を書くうえで、気を付けていることはありますか?
価値観がちがう人間同士の衝突や、それを乗り越えたうえでの関係……絶対理解できるわけじゃないけど、自分の信念をもったうえでも付き合えるような関係を書きたいし、書いていてたのしいなと思っています。
わたしは大学に入ってからはじめて海外に行ったのですが、そこからいまはもう15カ国くらい行きました! いっぱいいろんなところに行って、いっぱいいろんな人に会うことで自分が形成されるなと思っています。
読者のみなさんにもぜひ伝えたいのは、まずいっぱい遊んで、いろんな人と会っていっぱい心を動かす経験をするといいということです。
あと、これは私が学生の時に人から言われたことで、逆の話になってしまうのですが「まずは自分を持つ」ということも大事です。
世界のどこに行っても「自分」を持っていなかったら似たような経験しかできない。だから、まずは自分自身という“基盤”を作ることが大事だと思います。
STAGE2 『100億円求人』は『トップ・シークレット』からうまれた物語?
・ダウトの4人をもっと読みたい!
――一方、あんのまるさんのもう一つのお話『100億円求人』はどういうきっかけで生まれましたか?
いちばんはじめは、ちょうど『トップ・シークレット④』の原稿を改稿(☆文章を推敲する作業のことだよ!)していたころでした。
そのときは、物語の中に新しく「ダウト」という4人組が登場してきたタイミングで。
「トップ・シークレット」シリーズはやっぱりナノとレオの物語で、そこがメインになってお話が進んでいくんですけど、Oさんに「この4人のストーリーも、もっと読みたいです」と連絡をもらったのがきっかけです。
――ちょうど、打ち合わせで「ダウト」の結成エピソードをお伺いしたんでしたね。
はい。はじめに、物語に大きくかかわるルシィルと、ハッカーのスネイクというメンバーがいて、そこにイエールとジャックが現れて、一体どういう事件に巻き込まれて……という話をしていました。
連絡を受けたとき、わたしはちょうど電車に乗っていたのを覚えています。そこからの帰り道は映画『雨に唄えば』のワンシーンみたいにくるくる回って、もうめちゃくちゃうれしかったです。
そのときいちばんはじめに提案してもらった内容は、わたしが結成エピソードとして話した「人生最悪な4人が、出会って、意気投合して、世界を壮大に振り回して、だまして逃げ切るまでのお話」でした。
その日のうちに、物語のアイデアを思いつくかぎりたくさん送りました。ミステリー、アドベンチャー、マフィアもの、コンゲーム、バトルロワイヤル……そこから、コンゲーム(☆騙しだまされ、二転三転するスリリングなストーリーのこと!)の『100億円求人』に決めました。
相談の中で「いまの日本を舞台に、等身大の中学生の物語にしたらどうだろうか?」と話していき、ではどんな4人組が出てくる物語にしようか、と考えていきました。
・最後に決まったのは高橋くん
――登場人物のプロフィールもたくさんいただきましたね。
たくさん思いついた中から、はじめはなかなか決められませんでした。「どの子が好きですか?」と聞かれて「100億円求人」以外のアイデアで考えていた、楓とあざみが好きだと答えたんです。次に、その二人とバランスがよさそうな、また別のお話のアイデアにいたモネを選びました。
楓とあざみ、モネは、初期からずっとこの3人でした。じゃあ、残りの一人をだれにしよう? と悩んで、最後に高橋くんに決めました。他の3人にくらべてちょっとキャラが濃すぎない子がいいかな、と相談をして決めたのですが、結局彼が一番「濃い」かもしれません。
・100億円を稼ぐ、どうやって?
いま、ちょうど手元に当時のメモ帳を持っているので、見てみますね。
――はい! ぜひ。
最初『100億円求人』つまり100億円を稼ぐって、じゃあどういう仕事をすればいいんだろう? とアイデアを出しています。マグロ漁とか蟹工船とかって書いてありますね。それから、「コンゲーム=騙す相手をはっきり」とも書いてあります。
それで「『ムカつくやつ』を倒す」と決めて、先に決めた4人のキャラクターを掘り下げていきました。お話の中で、メンバーそれぞれの過去に関わる話をする、とも決めました。「昔やらかした4人」というキーワードはここで出てきましたね。因縁があってバラバラになった4人が「100億円求人」につられて再会する、と書いています。
・とにかく調べる!
――高橋くんたちがめざす理想郷「蓬莱郷」や、そのためのカギ・玉枝は、はじめは別のものを考えていましたね。
はい。日本が舞台だったので、決めるまでの間、たくさんのアイデアを出しました。古事記、かぐや姫、浦島太郎……そこから、近所の図書館の司書さんにお願いして、関連する資料をたくさん集めてもらいました。
物語を書くときは、いつもなるべく「30冊は本を読もう」と決めています。もちろんはじめから終わりまですべて読むのではなく、文献の目次を見て、必要なところをピックアップしていきます。
『100億円求人』は日本が舞台だったので集めやすかったかもしれません。いつもは、たとえばイタリア語で調べたものを翻訳して読まないといけなかったりします。
今回は、加えて大学時代にお世話になった「国際平和学」の先生にも、ちょっと取材のようなことをしました。高橋くんたちが見つけたとあるもののシーンでは、100億円でどのくらいのものが買えるのか、取材で知った内容が活きています。
物語の要素はこうしてすぐ固まったのですが、テーマ、核になる部分がぼやけていて、ずっと探していました。お世話になっている中学校の図書室の司書さんにも相談したりもして、いろんなものを読みながら「逃げる」というキーワードにたどり着きました。
――高橋くんたちは、小中学生のころのあんのまるさんに近いところはありますか?
ありますね。自分が小中学生のころを思い出したとき、ずっとキラキラする青春だけじゃなくて、鬱々とした時期もありました。そんなときに「もし私が『100億円求人』でこんな彼らと、なにか世界をひっくり返すようなことができたら絶対絶対楽しかっただろうな」と思って書きました!
STAGE3 この本を読んだきみに
・すべてが秘密で、超キケン
――いつも、どんなことをかんがえてお話を書いていますか?
自分が小学生のころ、しんどいときは本を読んでいました。誰ともしゃべらずにずっと本を読んで、なんとか時間をしのいで、みたいな感じで助けられていた時期もあります。そのときは本が友達だったし、本を読んだり物語を自分で書いたりして、自分の内面を本を通して整理していたと思います。
いま書いている『トップ・シークレット』シリーズは、昔は自分のためだけに書いていたものを、今度はほかの人のために、なにかちょっとだれかの救いになる「心に明かりを灯すような」楽しかったな、救われたな、って気持ちになれるような作品を書きたいと思って書いています。
――このインタビューが出るころには、すでに『トップ・シークレット⑨』を読み終えた読者さんもいるかもしれません。
あんのまるさんにとって、9巻はどんなお話でしたか?
『トップ・シークレット』は、わたしにとって本当に特別な物語です。
約17年間、ずっとわたしの心のなかでいっしょに歩いてきた物語で、まるで親友みたいな存在です。
このシリーズがあったから、わたしは小説家になるという夢を叶えることができました。
最終巻には、作家としての想いや、ひとりの読者だったころの気持ちの、全部を込めました。
読者のみなさんといっしょに過ごしてきたこの3年間の集大成として、思いきり感動してもらえる一冊になったと思います。
――さいごに、読者のみなさんへメッセージをお願いします!
公式サイトのコメントやファンレター、いつもたくさんの感想をありがとうございます。
ひとつひとつの言葉に、本当に力をもらっています。
どの言葉も、わたしにとってかけがえのない宝物です。
そんなみなさんにもっと楽しんでもらいたくて、手元に届いた“あの手紙”をもとに、「どうやってこの物語を届けよう?」と考えながら、この最終巻をつくりました。
『トップ・シークレット⑨』、最後のページまで、どうぞじっくり楽しんでいただけたらうれしいです。
そして、わたしはこれからも、いろんな場所で、いろんな物語を書いていきます。
またどこかで、わたしの物語と出会ってもらえたら、
そのときは、また応援してもらえるとうれしいです!
これからも、どうぞよろしくお願いいたします!