つばさ講座



このはな先生のプロット(あらすじ)を拝読(はいどく)してラフを切ります。
お話の中のシーンや、気持ちの動きからイメージをいくつか書きだします。
今回は、夏芽ちゃんの恋や受験でゆれる心を表現したかったので、久しぶりにせつない表情の表紙にしました。(1%は最初に読んだ時点で「こういう表紙を描きたい!」と思うことが多いです)
使いたい小物や心理イメージ、使う色のイメージなどもメモしています。これを担当さんに見せて詳細(しょうさい)なイメージや袖(そで)のイラストのイメージも固めていきます。
今回はありませんが、色の置き方を迷っているときは、ラフにざっくり色をのせてイメージボードを作ることもあります。



ペン入れ

ラフをコピーして線を濃くし、カラー用の紙にペン入れします。ラフはデッサンがおかしいところなど赤で修正しています。カラー用の紙は繊細(せんさい)で消しゴムをかけられないのでトレス台で下から光を当ててトレース(なぞって写すこと)します。
カラー用のインクは耐水性(たいすいせい)インクのグレーと黒をまぜたもの、ほおの部分だけはピンク色のインクを使っています。



肌の下塗り

ペン入れした紙を水張り(一度水にぬらした紙をパネルにはりつけて、シワがよらないようにすること)して、肌から色を塗っていきます。水色はマスキング液(紙の表面をカバーして色がつかないようにするもの)です。私のカラーはにじみやぼかしを多く使うのでマスキング液が必須です! ほおのピンクも塗ります。肌は全部カラーインクを使っています。



肌の影塗り

マスキング液をはがして、細かい影の部分を塗ります。顔の部分の影は入れる位置によって表情の印象が変わるし、修正できない部分なのでとても緊張(きんちょう)します…!



コートを塗る

薄い色→濃い色の順番で塗っていくので、次に髪、コートを塗ることにします。肌と同じようにマスキング→下塗り→影塗り、の順番で塗っていきます。夏芽ちゃんの気持ちのイメージを伝えるため、白くぬける部分と色を載せる部分を計算しつつ塗ります。手ぶくろ、マフラーも同じように塗っていきます。



スカートを塗る

次にスカートを塗ります。涙でにじんだイメージを出したいのでいつもよりにじみ多め、3種類の青系の色を使って塗っていきます。ここでも「ぬけ」と濃く塗る部分を意識します。



スカートの影を塗る

影になる部分に一番濃い青を塗ります。ここでもメリハリをつけたいので全部に影はつけません。涙の粒(つぶ)をイメージした効果も描き込みます。



髪の影とマフラーの模様を塗る

髪の流れを意識しながら濃い部分を塗った後、マフラーの模様(もよう)を描いていきます。模様は色鉛筆でうっすら下絵してから油性(ゆせい)マーカーで塗っていきます。ここでものっぺりしないように色の「ぬけ」を意識します。



瞳を塗る

カラーインクで下地を塗ってから、透明水彩(とうめいすいさい)で瞳を塗りこみます。こげ茶と黒を使って深みが出るようにします。ここでも表情の印象が変わるので、少しづつ全体を見つつ塗っていきます。眉(まゆ)やまつげなども塗ります。そのあとバランスを見て髪の影のさらに濃い部分を塗ります。



小物を塗る

コートの装飾(そうしょく)などこまかい小物を塗っていきます。全体的な影もここで調整します。少し時間をおいて全体を見直した後でコートにパステルで濃い黄色をおいて質感(しつかん)を変える部分を作ります。



ホワイトを入れる

髪や瞳(ひとみ)にホワイトで光を入れます。はみだしがある部分もここで修正します。スカート部分にホワイトでしぶきを入れて涙と夏芽ちゃんの気持ちを表現します。
ホワイトは筆につけるタイプとペンにつけるタイプの二種類を使っています。
乾いたら定着液をかけてトレーシングペーパーをかけて完成です。
担当さんにお渡しします。