角川つばさ文庫小説賞

第4回<一般部門>結果発表!

第4回角川つばさ文庫小説賞<一般部門>は、
最終候補4作品の中から、選考委員のあいはらひろゆき先生、
宗田理先生、本上まなみ先生による議論の結果、
下記の作品が大賞と金賞に選ばれました。
大賞、金賞受賞作品は、今秋に角川つばさ文庫から刊行される予定です。

一般部門受賞作品


大賞 とつげきリポート! 地獄ちゃんねる 一ノ瀬三葉(いちのせみよ)

ストーリー

小学5年生の渚は、お金と食べることに目がないハイパー元気な小学生。おいしいものをタダで食べられるグルメリポートに憧れて、アナウンサーを目指している。ある日、お金持ちのイケメン少年・クレイに出会う。お菓子につられてホイホイ彼の家に行った渚だったけれど、クレイの正体は、なんと地獄から来た妖怪だった! 地獄のテレビ番組のリポーターにならないと生きて帰れないってクレイは言うけれど!?

プロフィール

一ノ瀬三葉(いちのせみよ)。女性。おうし座のO型。
おふとんが大好きで早起きが苦手です。
好きなお菓子はチョコレートとたまごボーロ。

受賞のことば

 この度は素晴らしい賞をいただき、まことにありがとうございます。あいはら先生、宗田先生、本上先生、つばさ文庫編集部のみなさま、選考に関わってくださったすべての方に深く感謝申し上げます。
 小さいころから「おもしろい話」を見聞きするのが大好きで、本はもちろん、漫画やアニメ、ゲームに映画と、たくさんの物語世界に夢中になりながら育ちました。寝る前に読んだ本が夢に出てきて、好きなキャラクターといっしょに冒険の続きをしている、なんてこともしばしば。ほうっておくと、ずっと眠っているような子どもでした。
 そんな私が、まさか物語をつくる側のひとになれるだなんて! 本当に夢のようです。
 いただいた賞の名に恥じぬよう、これからも精進してまいります。どうぞよろしくお願いします!


金賞 出動! 美術警察!! まひる

ストーリー

須崎絵美は少女マンガが大好きな中学1年生。有名な画家である父に美術家になるよう期待されるが、その押しつけが苦痛で美術嫌いになってしまう。ある日、エミの描いた少年のイラストがクロッキー帳の中からしゃべりかけてきた。少年はロマンと名乗り、美術品の向こう側にある「美術界」から呼び寄せられたのだという。エミには美術界と現実界を繋ぐ力があるので、美術に関する事件を解決してほしいというけれど—!?

プロフィール

まひる。しし座のO型。
埼玉生まれの埼玉育ち。散歩と寄り道がとっても好きです。

受賞のことば

 はじめまして、このたびはすばらしい賞をいただくことができて、とても嬉しく思います!
 おはなしを観たり読んだりするのがとても好きで「いつか自分も作りたい」とずっと憧れていました。なので、まだ少し夢みたいな気分です。審査にあたられた先生方、選考にあたられた編集部の皆様、本当にありがとうございます。
 美術、と聞くと学校の勉強を思い出して苦手な人も多いみたいです。わたし自身、美術は難しいものと考えていたこともありました。でも実際に触れてみると、そこに描かれていたのは天使や悪魔のファンタジー、はたまた可愛い動物たちの日常など大好きなものばかりでした。そんな風に何百年も前の作品にこめられている気持ちや物語を、今この時代でも楽しめるって本当にステキなことだと思います。
 美術警察の二人が、そんなステキな世界へお連れするきっかけになったらとても嬉しいです。

選考委員選評

あいはらひろゆき

プロフィール

作家。著書に「くまのがっこう」「がんばれ!ルルロロ」「クローバーフレンズ」など。

選評

 今年の角川つばさ文庫小説賞の候補には読み応えのある作品が揃いました。その中で大賞を受賞した「とつげきリポート!地獄ちゃんねる」はとても完成度の高い作品でした。テレビ局のリポーター、地獄、妖怪などのキャッチーなモチーフ、魅力的で生き生きとしたキャラクターたち、ドライブ感のある文章など、どれも大賞にふさわしいレベルと言っていいでしょう。もちろん、事件解決を通じた主人公の成長もしっかりと描かれていて、まさに「つばさ」の王道を行く作品と言えるでしょう。
 金賞を受賞したのは「出動!美術警察」です。こちらは確かな美術の知識をベースにそこから説得力のある謎解きを展開する骨太の作品となっています。また、親子のあり方や絵への愛情といったメッセージも全体を貫く柱となっていて、「つばさ」の新たな読者を開拓するユニークな作品と言えるでしょう。
 残念ながら賞に漏れたうちの1つ「三つのフシギの使いかた」はランドセルが異世界への入り口となって物語が展開する魅力的な作品でした。キャラクターの魅力やテーマ性などがもう少ししっかりと描かれていれば、さらにいい作品になったと思います。もう1つの「おたすけ!ハッカー」はハッキングという現代的なモチーフを使った挑戦的な作品でした。ただ、子ども向けの作品としてはもう少しファンタジックな設定などを効果的にからませる必要があったのではと思います。おふたりとも次回作が楽しみです。

宗田理(そうだ おさむ)

プロフィール

作家。代表作『ぼくらの七日間戦争』。「ぼくら」シリーズは角川つばさ文庫でも大人気。

選評

とつげきリポート!地獄ちゃんねる」は、華やかなテレビの世界を描くにあたって、地獄から来た妖怪をからめた点がおもしろかった。ストーリーの作りかたがうまく、主人公をはじめとする登場人物のキャラクターもいきいきとしていて、楽しく読めた。やや新鮮味に欠けるところはあるが、全体を通してエンターテインメント性あふれる作品に仕上がっていたので、こちらを大賞とした。
 金賞の「出動!美術警察!!」は、ラファエロの絵からヴェールがなくなるというアイディアが斬新で、それを主人公が描いたイラストの少年とともに捜し当てる過程も良かった。また、親と子の人間ドラマも内包していて、シリーズものとしての展開が期待できそう。タイトルは、つばさ文庫の読者には少しとっつきにくい感じがするので変更を検討してもらいたい。
 ファンタジー作品が多い中、リアルな世界を舞台にした「おたすけ!神ハッカー」はもっとも読みやすく、読みごたえがあった。特に公民館での犯人との攻防は手に汗にぎるものがあった。残念だったのは、ハッカーから連想する犯罪的な要素をうまく処理できたとは言えない点。題材次第では、十分に大賞を取る力のある作者だと思う。次に期待。
 不思議な道具が登場する「三つのフシギの使いかた」は、着想は良いのだが、キャラクターの魅力が乏しく構成がいま一歩なので、せっかくのうまみを生かし切れていない。豊富なアイディアを持つ作者だと思うので、また挑戦してほしい。

本上(ほんじょう)まなみ

プロフィール

女優、タレントとして活躍するほか、エッセイや絵本などの著作も多数。

選評

 今年も読み応えある作品が揃いました。大賞受賞作は登場人物のキャラクターと物語のテンポの良さが群を抜いて良かった。元気でパワフルなヒロインの憧れの職業が「みんなに大切なことを伝える」アナウンサーというのも新鮮味がありました。クールな頭脳派のパートナーと力を合わせ悪に立ち向かうというストーリー展開は王道ですが、リポーターとして色々経験しながら自分の力で学び、夢に向かって歩みを進める主人公の成長の過程は、共感するとともに、応援したい、という気持ちで読むことができました。
 金賞は、実在する絵画をモチーフにした謎解きエンタテインメントです。大賞受賞作がつばさ文庫入門者向けとすれば、こちらは本が大好き、もっと複雑なものを読みたい!と思う読者にはぴったりの物語。アートの魅力を存分に伝えつつ、親子の関係性や恋の行方など、若い読者の心の成長に欠かせない要素もふんだんに取り入れられ非常にバランスの良い、完成度の高い作品だと感じました。
 今回受賞とはなりませんでしたが「おたすけ! 神ハッカー」はラストの夏祭りの描写が特に丁寧で印象に残りましたし、「三つのフシギの使いかた」は幼馴染み同士が時にぎくしゃくしながらも、認め合って共に歩んでいくというちょっと複雑な人間関係がうまく表現されていました。テーマ、そして仕掛けは良いものを選ばれていましたが、それを十分に生かしきれていなかったのが残念でした。次作に期待します!