角川つばさ文庫小説賞

第5回<一般部門>結果発表!

第5回<一般部門>結果発表!

第5回角川つばさ文庫小説賞<一般部門>は、
最終候補3作品の中から、選考委員のあいはらひろゆき先生、
宗田理先生、本上まなみ先生による議論の結果、
下記の作品が金賞に選ばれました。
金賞受賞作品は、今秋に角川つばさ文庫から刊行される予定です。

一般部門受賞作品

金賞

世界一クラブ

大空なつき

ストーリー
徳川光一は、三ツ谷小六年の男子。「世界一、博識な小学生」だ。始業式の朝、光一は幼なじみで「柔道世界一の小学生」すみれとともに登校した。だが学校は、脱獄犯が立てこもり、封鎖されていた! 脱獄犯が、あこがれの図書館司書・橋本先生を人質にしていると聞いた光一は、クラスメートの「世界一のものまね小学生」健太、「世界一の美少女小学生」クリス、となりのクラスの生徒で、実は「世界一の忍び小学生」である和馬を仲間にひきこんで、先生救出作戦をくわだてる!「世界一クラブ」の結成だ!!
プロフィール
大空なつき。東京都在住。
趣味は、愛用のクロスバイクでのサイクリング。知らない道を通るのが好きです。
いちごと生クリームが大好物。
受賞の言葉
まずはこのたびの受賞にあたり、選考委員の先生方、編集部のみなさまをはじめ、選考に携わってくださったすべてのみなさまに心よりお礼申し上げます。本当にありがとうございました。
子どものころから読書に夢中で、毎日読んだ本をふり返っては「こんなキャラクターを入れたい」「こんな事件を起こしたい」と考えながら眠りについていました。つらいときも苦しいときも、いろいろな物語からたくさんのエネルギーをもらってきました。そんな本を私も書きたいと物語をつづりはじめ、こうしてスタートラインに立つことができ、感無量です。

これから世界一クラブのメンバーとともに、夢とスリルがいっぱいつまった物語をお届けしていきたいと思います。

まだまだ未熟な私ですが、そうそうたる受賞作のならぶ「角川つばさ文庫小説賞」の第5回受賞者として、その名に恥じぬよう精進してまいります。なにとぞよろしくお願いいたします。

選考委員選評

あいはらひろゆき

プロフィール
作家。著書に「くまのがっこう」「がんばれ!ルルロロ」「クローバーフレンズ」など。
選評
 今年の「角川つばさ文庫小説賞」は、残念ながら大賞受賞者はなしという結果になりました。
 読み応えのある魅力的な作品もありましたが、さらに大きく花開いてもらうためにもあえて厳しい選考が必要だろうと選考委員一同で判断した結果です。ご理解ください。
 その中で唯一、金賞を取ったのが『世界一クラブ』です。この作品は一級のエンタテインメント作品としての十分な可能性を感じました。様々な分野での「世界一」たちがクラブを結成し難事件の解決にあたるというフレームは、ヒットシリーズの誕生を予感させます。ただ、期待が大きいだけに課題も目につきます。5人の「世界一」や脱獄犯、警察など登場するキャラクターたちの作りこみがまだまだ甘い点が特に気になります。もう一度キャラクターをじっくり練り上げ、魅力的な作品に仕上げていただくことを期待します。
『茉居家は四姉妹!』はさわやかな秀作です。姉妹愛、自立や社会への巣立ちなど思春期の重要なテーマを扱っているにもかかわらず、重くなりすぎず、好感の持てる作品です。残念なのは、後半に登場するグラディア王国のくだりです。ファンタジーを織り交ぜようとした狙いはわかりますが、前半との調和がうまくとれておらず、分断されてしまっている印象がぬぐえません。前半が魅力的なだけに残念です。
 最後に『あたしは夢見る歌舞伎ガール!』ですが、今旬の歌舞伎を小学生にもわかりやすく紹介しつつ、カナちゃんと主人公の交流などを上手に織り交ぜています。ただ、ストーリー展開が弱く、単調な流れになってしまっています。演劇部というモチーフも歌舞伎との絡みが弱く、浮いてしまっている印象です。そのあたりを再考すればいい作品に仕上がるのではと思います。

宗田理(そうだ おさむ)

プロフィール
作家。代表作『ぼくらの七日間戦争』。「ぼくら」シリーズは角川つばさ文庫でも大人気。
選評
『あたしは夢見る歌舞伎ガール!』は、主人公の少女に中学生らしい魅力があり、友だちもよく描けていた。だが、全体の構成が今一つだった。
 夏休みの演劇部の大会で歌舞伎をやるなど、主人公の歌舞伎好きと実際の部活動とを結びつけるエピソードがあったらよかった。これでは、単に歌舞伎好きの少女のお話というだけで終わってしまう。ストーリーのつくり方をもう少し勉強したら、もっと読者を惹きつけるものが書けると思う。
『茉居家は四姉妹!』は、生まれてすぐにばらばらにされた一卵性四つ子姉妹の絆と成長の物語ということで、育った環境の違いによって、しっかりとキャラクターを描き分けることができていた。だが、そのために、ある秘密が後半で突然明かされるのだが、これがどうもついていけない。普通の話ではありふれていると思って作者が考えたのかもしれないが、そこに思い違いがある。
 一卵性に限らず普通の四姉妹でも、母親との間には、腹を抱えるような喜劇や思わず涙してしまうような悲劇がごろごろある。題材はおもしろいので、作者には、そういう家族小説をもう一度書いてもらいたい。
『世界一クラブ』は、世界一の能力を持った小学生五人が、学校に立てこもった脱獄犯から先生を救出するストーリーで、一気に読めるおもしろさがあった。物語の大半は一晩の救出作戦だが、そこもよく書きこまれていた。
 ただ、こういう場合は、敵も世界一に匹敵するくらいのワルであってほしい。また、この脱獄犯たちは、なぜ学校に忍びこんだのか。そこに、もっともな理由が必要だ。あともう一つ、主人公たちに加えたいのがドジな仲間である。あんまり優秀な者ばかりでは単調になってしまって、少ししんどい。
 以上のような点が物足りなかったため、大賞には漏れてしまったが、読み手を惹きこむ筆力と作者の将来性を買って、この作品を金賞に選んだ。

本上(ほんじょう)まなみ

プロフィール
女優、タレントとして活躍するほか、エッセイや絵本などの著作も多数。
選評
『世界一クラブ』は、宗田理先生の「ぼくら」シリーズを継承するような少年少女の群像劇。人質となった教師をチームワークを駆使して助ける物語はテンポ良く、楽しく読むことができました。犯人たちのキャラクターを描き分けることができれば、さらに厚みのある作品になるでしょう。脱獄犯が集団でありながら画一的に見えてしまった点と、警察チームの間抜けっぷりが目立った点でドキドキ感が薄れたのが惜しかった。主人公たちに相応しい「手強い奴ら」を準備していただきたいです。体力、頭脳、ハズしのユーモア…彼ら彼女らが「世界一」を名乗るのも納得、という活躍をして欲しい! という期待をこめ、金賞となりました。
『あたしは夢見る歌舞伎ガール!』は、登場人物が魅力的、物語を引っ張っていく力があると感じました。主人公あえかちゃん、彼女のかけがえのない友人となっていくジェンダーレスな男の子カナちゃんの人物像が際だっていましたね。ヒロインの心のうちを目の前の情景とからめて描くなど、丁寧な描写も光っていたと思います。惜しかったのは後半部分、演劇大会があっさりとしか描かれていなかった点。時代劇風シンデレラという演目の具体的な台詞やみんなの奮闘ぶりなどお芝居の中身が見えてくると、笑って泣いてのラストがより生きるように思います。
『茉居家は四姉妹!』は、中学一年生の四つ子が子どもだけで共同生活を送るという設定が良かった。養護施設や里親のもとで別々に育った彼女たちが新しい居場所を得て「家族」となっていく…彼女たちの戸惑い、喜びや嬉しさがとても豊かに描けていました。ただ、親と離れた理由づけをややファンタジーに振りすぎてしまったかな、と。姉妹の物語に十分読ませる力があったので、少し唐突な印象を受けてしまい、そこが残念に思いました。贈賞とはなりませんでしたが、二作品とも魅力的なキャラクターが印象的でした。次回作を楽しみにしています。

一般部門 最終候補作品

あたしは夢見る歌舞伎ガール! 小川真実
茉居家は四姉妹! ひのひまり
世界一クラブ 松村亜紀

一般部門 2次選考通過作品

S.T.P. 久美しずえ
ようこそ白ヤギ部へ! 結城きのこ
リボンの棋士 ガール・ミーツ・ゲーム 平河ゆうき
あたしは夢見る歌舞伎ガール! 小川真実
読モガールズ! かわいつくし
茉居家は四姉妹! ひのひまり
リュカにお任せ!! 高清水ヨオキ
かさねの姫君 真風月花
解決! 恋愛相談部! 水野輝実
縁の下のヒーロー ゆうきまこと
大妖精の弟子の助手 水野むつき
世界一クラブ 松村亜紀

一般部門 1次選考通過作品

最後の運動会 ナカムラえぬ
千夜の詩より みほしちょうめい
S.T.P. 久美しずえ
ようこそ白ヤギ部へ! 結城きのこ
魔女の記憶 N
リボンの棋士 ガール・ミーツ・ゲーム 平河ゆうき
図書室のダレカ 神保蓬兎
あたしは夢見る歌舞伎ガール! 小川真実
読モガールズ! かわいつくし
放送委員は大騒動!? 高清水ヨオキ
茉居家は四姉妹! ひのひまり
リュカにお任せ!! 高清水ヨオキ
かさねの姫君 真風月花
サエコさんとあたしとドラちゃん 7044
ネバーランドへようこそ 阿部洸士
解決! 恋愛相談部! 水野輝実
サムアップ! 超時空王子 たかのけんいち
森の種 西山むん
Oh〜! マイ ゴッド 北海童子
縁の下のヒーロー ゆうきまこと
もっとココ(ハート)使って! 幕田麻里
大妖精の弟子の助手 水野むつき
世界一クラブ 松村亜紀