第12回<一般部門>結果発表
第12回角川つばさ文庫小説賞〈一般部門〉は、
最終候補作3作品の中から、選考委員の宗田理先生、
藤ダリオ先生、本上まなみ先生による議論の結果、
下記の2作品が金賞に選ばれました。
一般部門受賞作品
- ストーリー
- わたし、丸枝色葉! 食べるのと同じくらい、かわいいものが大好き! ……でも、最近、クラスでは大人っぽくておしゃれなものが流行中なんだ。みんなと話が合わなくてなやんでいたある日、学校で人気のクール王子・吹雪冬也くんが「かわいいもの好き」ってヒミツを知っちゃった……! 放課後、話があるって呼び出されたのは「うさぎのマスコットをおそろいでつけてるフリをしてほしい」ってお願いで……!? 男でかわいいもの好きなのはヘンかも……って、そんなこと絶対ないよ!
- プロフィール
- 胸が「ぎゅっ」として「ほっ」とするお話が好き。小学生のころ、学校で生まれたうさぎを引き取ってから、ずっとうさぎ推しです。大学では平安文学を学びました。
- 受賞の言葉
- 本屋や図書館で、あきれられるくらい長い時間を過ごせたのが、幼いころのわたしでした。本がある場所って楽しいですよね。
当時、小説家になりたい、とも思っていました。けれど「あきっぽいから長編は書けないなぁ……」と言っていたことも覚えています。
そんなわたしが、おとなになって、小説家への道を進んでいます。不思議ですね。
子どものころ、どきどきしながら買っていた児童文庫。今度はわたしが、物語を好きなだれかのもとに本をお届けできるなんて、本当に不思議でわくわくします。
このたびは素敵な賞をいただきまして、ありがとうございます。選考にたずさわってくださったみなさま、そして応援してくださったみなさまに、お礼申し上げます。
いまわたしが感じているしあわせを、物語をとおして、みなさまにお返ししていきたいです。
あなたに、すてきな物語をお届けできますように。
- ストーリー
- わたし、天宮灯は、最近『#アオハルチャレンジ』っていうのにハマってる。SNS上で「アオハル仕掛け人」から出される「お題」をクリアして、その写真や動画をSNSにあげるってだけなんだけど……友だちといっしょに「青春っぽいこと」をするのが、なんだか楽しいんだよね! 今日も、同じ部活の安達くんといっしょに「#連続おやつチャレンジ」をクリア! 毎日いっしょにおやつを食べるってすごくなかよくなれた気がする。そして、じ、じつはわたし、安達くんのことが……。
- プロフィール
- 熊本出身で福岡在住の会社員。
幼い頃から読書が趣味で、社会人になってから執筆活動を開始。
現在書籍化に向けて作業中。
- 受賞の言葉
- この度は素晴らしい賞をいただき、本当にありがとうございます。
子供の頃から物語が好きで、「将来はお話を作る人になりたい」と思っていたものの、思うだけで、実際に小説を書きはじめたのは大人になってからでした。
角川つばさ文庫小説賞には今までにも何度か応募しましたが、いずれも一次選考すら通過せず。上手くいかないことも多かったです。
もしも1人で書いていたら途中で心が折れていたかもしれませんけど、それでも続けられたのはネットを通じて、小説仲間と励まし合っていたおかげです。
今回受賞した「アオハルチャレンジ!」でも、そんなネットを通じての人との繋がりをテーマにしています。
ネットは怖い側面もありますけど、年齢や性別を越えて人の輪を広げられる素敵な場所です。
好きなものを共有したり共感し合ったりして、顔も知らない誰かと喜びを分かち合うのって、不思議なワクワクがありますよね。
作品を通してそんなネットやSNSの楽しさを、伝えていきたいです。
選考委員選評
- プロフィール
- 作家。代表作は『ぼくらの七日間戦争』。「ぼくら」シリーズは角川つばさ文庫でも大人気。
- 選評
- まずは金賞に選んだ2作品について。
『かわいいもの同盟!』は、ほのかな恋愛感情や友達関係が変化していく様子など、主人公、色葉の心の成長がよく描けていた。ただ展開の幅が狭いためか、物足りなさも感じた。例えば、花恋の親が経営する会社に、色葉と吹雪がかわいいものの企画を持ちこみ、商品化を進める中で花恋も心を動かされるなど、3人の絡ませ方をもうひと工夫して、物語に奥行きをもたせることができたら、もっとよくなったと思う。
『アオハルチャレンジ!』は、アイディアを評価したい。SNSと現実世界の書き分け、SNSを使って仲間を集めて事件を解決するなど、現代風にうまくまとまっていた。だが全体としては、淡々としていて、おばあさんの猫を助けるというラストも盛り上がりに欠ける。主人公が軽い気持ちで始めたアオハルチャレンジがとんでもない事件を引き起こすなど、もう少し、ストーリーに起伏がつけられるとよかった。
惜しくも選外となった『ラボエスケープ~僕らが地球を救うまで~』について。パンダーニュという宇宙人が登場する、意欲的な作品ではあったが、地球侵略が目的の割には宇宙人が恐ろしくなく、仕掛けるゲームの意図もよくわからない。読者が納得できるようにてんまつを書いてほしかった。
今年は、例年と比べても小粒な作品が多かったように思う。女の子の心理を丁寧に描写した小説も良いのだが、そればかりでは、角川つばさ文庫の読者層は広がらない。女の子だけでなく、普段少年マンガを読んでいるような男の子を振り向かせるくらいの、ハラハラドキドキするスケールの大きな応募作を待っている。
- プロフィール
- 作家、脚本家(藤岡美暢)としても活動。脚本の代表作 映画『貞子3D』、アニメ『殺戮の天使』など。著作に角川つばさ文庫「絶体絶命ゲーム」シリーズなどがある。
- 選評
- 最終候補の3作はどれも魅力のある作品でした。ただ、読者を夢中にさせるパワーが不足しているように感じました。
『かわいいもの同盟!』は、モチーフとテーマは抜群にいいです。小学5年生になり、周りはかわいいものから、大人っぽいものが好きになっていく。その中で、主人公は周りに流されずに、かわいいものが好きだという気持ちを変えない。自分らしさを失わないというテーマは、大人にも通じるものです。物語の展開も、ひねりがあり非凡なものがあります。ただ、主人公以外のキャラクターに工夫がほしいです。女子に人気の吹雪くんや、主人公を敵視する花恋と原さんのエピソードが足りません。全体的なクオリティーは高いので、面白い作品が書ける人だと思います。
『アオハルチャレンジ!』は、SNSという現代的なモチーフが最高にいいです。登場人物も良くできています。主人公が恋をする安達くんは、ミステリアスで魅力的です。欠点は、構成(ストーリー)です。前半から中盤にかけて、主人公が写真部に入る過去話になりますが、ここが長いです。過去話は、よほどの仕掛けをしないと読者が退屈します。中盤以降もストーリーの展開が少なく、クライマックスのエピソードも主人公がピンチにならないので盛り上がりに欠けます。それでも、きらりと光るものがあり、大化けする可能性を秘めていると思います。
『ラボエスケープ~僕らが地球を救うまで~』は、宇宙人の目的と、連れてこられた子供たちがやらされるゲームが合わない感じがしました。宇宙人がやらせているのなら、もっと奇想天外でダークなことができたと思います。読みやすくて、発想は良かったので、ほかの作品を読んでみたいです。
- プロフィール
- 女優、タレントとして活躍するほか、エッセイや絵本などの著作も多数。
- 選評
- 『かわいいもの同盟!』は、主人公の素直さ・明るさに心奪われました。キャラクターグッズをこよなく愛する小学五年生は、確かに同級生から見れば幼さがあるのかもしれないけれど、「好きなものは好き」と言い切れるって清々しいです。その彼女が、好きなものを好きって言わない、言えないでいる友だちに出会って、そのわけを知っていく過程が丁寧に描けていました。ぽんぽん会話が弾んだり、訥々と言葉を紡いだり。喋り方でも性格や関係性が伝わってきますよね。場面場面で緩急があり、楽しかった。構成も良く練られていました。
『アオハルチャレンジ!』は、画像動画投稿サイトのハッシュタグの名前。青春っぽいお題が出されるたび、みんなが投稿〜賑わう、という設定なのですが、お題がどれも、やってみたいという気にさせるものばかり。これは読者世代に最も興味のあるテーマのひとつだと感じました。物語自体がSNSと適切に関わっていくことのお手本となるような展開で、日常の楽しみ、ちょっとした幸せをシェアし合うという本来の目的に即しているのも良かったです。
残念ながら贈賞とはなりませんでしたが『ラボエスケープ~僕らが地球を救うまで~』も、他にない切り口で粒だった個性を描いていました。小学生の脱出ゲームですが、家事能力が試され、課題をクリアしないと自宅に戻れないと言うのです。せっかくだから敵をパワーアップさせ、子どもたちも意見が割れて揉めたり、難しすぎて悲鳴をあげるくらいに、難易度5倍増しでも良かったと思います。2年連続最終選考ってすごいこと。ぜひ自信を持って下さい。来年は贈賞式でお目にかかれるはず、と期待しています。
今年度は生活の日常の延長線上にある物語が多い印象でした。「こんな世界見たことない!」とのめり込まされてしまう、創造力+想像力みなぎる作品も引き続きお待ちしています。
一般部門 3次選考通過作品
かわいいもの同盟! |
橘花やよい |
ラボエスケープ~僕らが地球を救うまで~ |
夢乃 ひいろ |
アオハルチャレンジ! |
無月弟 |
一般部門 2次選考通過作品
しましま☆デビュー |
夏間木リョウ |
ツバサのダブルス |
河端 朝日 |
わたしがアタシ⁉ |
西出 あや |
王子は『愛ある物語』を知りたがる |
広原琉璃 |
かわいいもの同盟! |
橘花やよい |
ドアトントン |
富升 針清 |
読んじゃダメ |
渡 周太郎 |
ラボエスケープ~僕らが地球を救うまで~ |
夢乃 ひいろ |
アオハルチャレンジ! |
無月弟 |
七不思議☆モニタリング!~コックリさんと黒王子と図書室のモナ・リザ~ |
桂真琴 |
妃候補はパン屋の娘 |
山田露子 |
ぼくのペットはトイレットペーパー |
かねさわ巧 |
不思議の神隠さんと七陣小の七不思議 |
青木のう |
一般部門 1次選考通過作品
秘海のギフトアイランド |
おしろ かおる |
しましま☆デビュー |
夏間木リョウ |
恋シュート 初恋は抹茶味 |
百道 みずほ |
リッチな彼氏の好きなこと |
大葉 よしはる |
ツバサのダブルス |
河端 朝日 |
わたしがアタシ⁉ |
西出 あや |
はじめてのドリームメイキング |
琢磨 たくま |
僕たちの設計図 |
まえ まさと |
ブルームクロス! |
水原 タロ |
王子は『愛ある物語』を知りたがる |
広原琉璃 |
かわいいもの同盟! |
橘花やよい |
ドアトントン |
富升 針清 |
ヒョイラレ |
如月芳美 |
道具たち百鬼夜行を企む、あの鉄塔を登る、落ちる |
大森 都加沙 |
鈴と不思議な旅人たち |
草為 |
俺っ娘女子化計画 女の子に俺はなる! |
如月 二十日 |
おりえん! |
美崎 あらた |
私は妖怪ではありません! |
綱島 浩一 |
読んじゃダメ |
渡 周太郎 |
ラボエスケープ~僕らが地球を救うまで~ |
夢乃 ひいろ |
天使プロジェクト |
柳律斗 |
あなたをとりこにする魔法 |
波野留央 |
おいでよ変なモノ博物館! |
青木のう |
美少女戦士キヨラ |
宝希☆/無空★むあき☆なお/みさと★なり |
星降る夜のお客さま |
原ねずみ |
隣の席の目堂さんは髪の毛に蛇を飼っている ―そして僕はトマトジュースを飲む日傘男子― |
ひゐ(宵々屋) |
ただいまアイドル研修中! |
花梨 |
天倶小学校新聞部 ~天狗の占い屋と七不思議のヒミツ~ |
七草裕也 |
アオハルチャレンジ! |
無月弟 |
リトルホテルへようこそ |
湖ノ上茶屋(コノウエサヤ) |
色ぬりはおまかせ。私たちレインボー工房です? |
チクチクネズミ |
お遊戯会っ! |
翠川稜 |
クローバーノート リレー小説部へようこそ! |
やなか |
シャロン・ホームズの華麗な冒険 |
雑食ハラミ |
図書委員は魔術師見習い!? |
蟬時雨あさぎ |
魔法香る街へようこそ! |
吉野茉莉 |
天使、拾いました。 |
よこすかなみ |
七不思議☆モニタリング!~コックリさんと黒王子と図書室のモナ・リザ~ |
桂真琴 |
片足のランナーと小さな女優 |
高田正人 |
妃候補はパン屋の娘 |
山田露子 |
ぼくのペットはトイレットペーパー |
かねさわ巧 |
夏休みのパープルアイズ |
楽使天行太 |
不思議の神隠さんと七陣小の七不思議 |
青木のう |
松之木学園♥生徒会執行部【完】 |
柚木ミナ |
天乃ジャック先生は放課後あやかしポリス |
純鈍 |
魔法少女はまだ翔べない |
東 里胡 |
オン・ユア・マークス ~秘密の部活ノート~ |
朱里コウ |