こども部門受賞作品

選評

蜂が鼻の穴に巣をつくる、という奇想天外なアイディアを違和感なく、物語として読ませる力が白眉の出来でした。読後に、タイトルに妙に納得がいくところもよく練られています。蜂の一生に寄り添い、助けられながら、小５の僕も、少し成長する。この設定で、笑いも涙もあるのが、本当に驚きの作品です。さらに、このできごとを、僕が作文にまとめ、ラストで35歳の僕が振り返るという組み立て方も見事でした。作文を読んだ先生の感想が、まさにその通り！

選評

短い作品ながら、とても読み応えがありました。シンプルな表現と、サクサク進む展開、コロコロと変わる物語の全体像とで、初めから終わりまで緊張の糸が途切れず、この物語はどこに着地するのだろうか？　とハラハラしながら読み進めました。全体に無駄がなく、ラストのオチまで見事です。よく練られ、とぎすまされた物語だと思います。

選評

この老人は何者なのか、いったい何を語るのか。そして、この『私』とは誰なのか。非常に興味をそそられる書き出しでした。中盤からラストに向かうまでも、緊張感がぴんと張りつめていて、読めば読むほど引き込まれ、続きが気になります。不安や焦り、公開などの心のゆらぎを細やかに救い上げる心理描写力、においや温度まで伝わってくるような描写力、読み手の心をつかんで離さない構成力の高さに感服しました。すばらしい作品をご投稿いただきありがとうございました。

選評

だれもいない学校の、自分だけが知っているひみつの場所で、だれも知らないひみつのお友達といっしょに遊ぶなんて、想像しただけでワクワクしちゃいます。しかも、主人公は校長先生。なかなか思いつかないような、意外な組み合わせがステキです。おばけだと思っていたら、実は宇宙人で、お別れをしなければならないという展開にもおどろきがありました。おばけちゃんからもらった『しんじゅ』を見つめるラストが切なくて、心に残りました。

選評

じごくに迷い込んでしまったみずきが、エンマ大王から、「じごくではたらくか、妖界ではたらいて十万円をためるか」という二択を迫られるシーンで、まず心をつかまれました！　妖怪からの依頼も、一つ一つ妖怪の特徴を表していて、時にはクスッと笑ってしまうような「おなやみ」もあって、可愛いお話です。カッパががんばる姿を見て、自分に重ね合わせ、「わたし……友だちを作るために、ここまでがんばったことある？」と自問自答するシーンには、ハッとさせられました。

選評

探偵を育成する塾。これだけで、ワクワクしてしまう！　主人公のキャラクターも、大変魅力的です。前半の推理問題もよく練られていて、こんな塾があったら楽しそう、という魅力を強化する具体性もあります。怪盗Xから個人的に挑戦を受けるシーンも心おどりました。それゆえに、最後の謎解き部分は、もう一息具体的に読めたら……と欲張りな感想を抱いてしまいます。ラストまで「楽しい」が詰め込まれた、魅力的なエンタメ小説でした。

選評

淡々と日常描写が続いたかと思えば、スッと「ぼくは、奴隷だった」という一文を差し込んで読者をドキッとさせる、タイミングがかっこいいです。読者にとってはむしろ娯楽である「読者」や「歌唱」などの表現活動が「労働である世界」というのに興味を惹かれ、どんどん読み進めてしまいます。そして、さすがは中学３年生、ほとんど大人レベルに世界観がしっかりと作り込まれていて、最後のオチまで計算されていました。お見事！

入賞

選評

タイプの違う４人は、それぞれ得意分野の違う妖精と組み、氷と雪、炎、風、植物を使ったスペシャルな技で戦う。この描写に、ドキドキハラハラさせられ、ゲームの世界に引き込まれました。戦いの後のゲームマスターからのアドバイスも論理的で、納得できます。

選評

街並み、すばらしい景色を目の当たりにする描写に、自分も一緒にその場所に行ったような気持ちになります。料理名とストレートな味の表現の組み合わせも効果的です。アダムとの会話は優しく、温かみがあり、二人の旅をいつまでも追っていたい気持ちになりました。

選評

麗の目を通して見る世界は重苦しく辛いもので、その心情描写に、冒頭から引き込まれました。辛い、という感情描写も多様で、年上の麗の心情をリアルに描く筆力に驚きました。じゅるとの対話、セリフの力強さ、ラストシーンの晴れやかさに説得力を強く感じます。

選評

世界観、空気感の作り込みが見事で、引き込まれました。夢のシーンは、幻想的でありつつ実感を伴う筆致で、彼が星を求める気持ちに共感がしやすい作りです。ラストまで一貫して、キャラクターがみんな少しずつ人間（？）臭くて優しい物語で、そこが大変魅力的でした。

選評

キャラクターのセリフや文章がコミカルで笑いがいっぱい。読者を笑わせて、楽しませてくれる物語。さらに展開が意外で、驚きがあります。事件が解決したと思ったら、こんどはいっしょに桃太郎を探していた鬼が意外な行動にでます。起承転結のあるお話でした。

選評

主人公の内面を描く力が感じられました。現実では言葉にしづらい悩みや苦しみを、美しい夢の中で解決して、もう一度、現実と向き合う強さを身に付ける。寝て見る夢と、起きてから持つ将来への夢。二つをうまくつなげて、明るく前向きなエンディングを描けていました。

選評

少ないページ数のなかで、世界観の作り込みにムダがなく、起承転結がうまく作られています。男の子と死神が、かつては父子の関係だったと明かされるラスト、そして「絆」というタイトルに込められた、あたたかなメッセージがまっすぐに伝わってくる秀作です。

選評

アンヌの感情の変化を丁寧に描きながら、「死」というテーマに真正面から向き合い、一つの物語としておもしろく成立させていたるのがすばらしいです。死が近づくにつれて散っていく花の描写が幻想的で、読者の心を逃しません。最後の展開も意外で感心しました。

選評

親友と呼べる人物に出会い、音楽という夢を見つけた主人公たち。優しい言葉をかけるだけでなく、ときにぶつかり合いながら夢に向かって突き進んでいく彼らが、このあとどんな活躍をみせるのか。物語のその後も気になる、素敵なお話でした。

選評

昇格試験を通して、３年生との思い出がよみがえるという構成が魅力的でした。「小さなことも、物事を思い出すきっかけになる」という思考の過程に共感できるとともに、繊細な描写から筆力を感じます。最後、演劇は楽しいと伝えるシーンには心を打たれました。

選評

作品の中で生き生きと動くキャラクターが非常に魅力的で、よく作り込まれていることがわかります。読み手も一緒に参加しているような流星と日向の掛け合いに引き込まれました。人を幸せにする力だと気づく過程にじんわりと心が温かくなる、素敵な作品です。

選評

もっとできることがあったんじゃないか。もしあの時違う行動がとれていたら、そんなどうしようもない後悔と苦しみが、主人公の心の声とともに、痛いほど伝わってきます。深い後悔の先で、前を向ける主人公の強さまで描ききった点もすばらしかったです。

選評

自分が何者かわからないという主人公の心理描写、一つ一つの謎が解き明かされていく展開に夢中になりました。花やそれぞれのキャラクターの描写も丁寧で、生き生きとしています。最初の描写が結末とリンクしている点もすばらしく、何度も読みたくなる作品です。

選評

決してサボりたかったわけじゃない、でもどうしても学校に行けない。切実な咲月の心の叫びが、原稿から伝わってきました。欲を言えば、後半にあともう一つ、読み手をあっと言わせる出来事が入ると、より作品の深みが増したかもしれません……！　次作に期待です！

選評

冒頭がとても新鮮。実験の規模が大きくなっていく過程も、映像作品のように感じられ、緊張感が増していく描写も見事でした。ストーリーの決着への期待が高まっただけに、少し肩すかしとなってしまったのが惜しいです。でも、ぜひ今後も書きつづけてほしいです。

選評

死生観、伝えたいメッセージが考え抜かれており、明確に心に届きました。ファンタジックな設定ながら、導入から滑らかな語りで自然に引き込まれます。先輩のキャラクター、小物使いも洗練されており、たしかな筆力を感じました。ストーリー構成もすばらしいです。