編集部からのお知らせ


第3作め❤みんなが送ってくれたアオハルチャレンジのネタをもとに、作者の無月蒼さんが短編を書き下ろしちゃう企画です!

第12回角川つばさ文庫小説賞で〈金賞〉を受賞した『アオハル100%』
# 読者の考えたアオハルチャレンジ
を募集したところ、
ファンレターや、感想投稿から、たくさんアイディアが集まったよ。
寄せられたアイディアで、書き下ろしたSS(ショートストーリー)、さて今回はどんな話?



『アオハル100% # 読者の考えたアオハルチャレンジ』

スペシャルストーリー3☆パンをくわえてダッシュ

「ごめーん、待ったー?」

放課後。
学校が終わったあと、わたし――火花ほむらと、クラスメイトのクルミくんは、公園にやってきた。
わたしたちが急ぎ足で近づくのに気づいて、先に来ていた男子が顔をあげる。

「おー、ユウ」

って言いながら、片手を上げた、この男子。
すらっと姿勢がよくて、ラフなファッションなのに、まるでタレントさんの私服すがたみたいに、キマッてる。
この人の名前は、東條ライ。
別の中学に通ってる、クルミくんの小学校のころからの親友。

「待たせてごめんね、ライ」
「いいに決まってんだろ」
もうしわけなさそうな顔をするクルミくんの肩を、ライがこづきながらじゃれる。
ライは、クルミくんのことが大好きなんだよなあ。

「――それで? とつぜん連絡してきて、いったいなんの用だ?
火花と2人そろってきたってことは……また # アオハルチャレンジ か?」

「せいかーい!」

わたしは、ライとこの前知り合ったんだけど。
いっしょに# ダンスで暑さをふき飛ばせ とか、# 夏休みにスプラッシュ といったアオハルチャレンジをやってきたの。

「実は新しいアオハルチャレンジをやるために、どうしてもライの協力が必要なの」
「オレの? 今度はいったい、どんなチャレンジなんだ?」 
「これなんだけどね」

わたしはライにスマホを見せる。
新しく選んだお題は、つきレモンさんが送ってくれた、 # パンをくわえて走る だよ。

マンガとかで、遅刻しそうな主人公が、パンをくわえて走ってるってシーンがあるじゃない。
アレを、実際にやってみよう――っていうお題なんだ。
すると、ライは首をかしげる。

「やるのはいいけどよ。わざわざオレを呼ばなくても、クルミや火花がやればいいんじゃね? 火花なんか、パンくわえて『遅刻チコクー』ってさけぶなんて、ピッタリじゃねーか」
「どーいう意味!? ……って、まあわたしも最初は自分でやろうとしたんだけど、ちょっと問題があってね」
「問題?」
「わたしたちがチャレンジ写真をSNSにポストするときって、スタンプで顔隠すじゃない。けど今回それやると、顔といっしょに、くわえてるパンまで消えちゃうんだよ」

これはお題を発表したあとに気づいちゃったんだ。
チャレンジはしたい。
けど、気がるに顔出しはできないよね。
青春仕掛人のアカウントでも、「身バレしたくない人は気をつけてね」って注意喚起をしたんだけど……そのせいでみんな苦戦してるみたい。
今回はあんまり、チャレンジした写真がポストされてないの。

せっかくはじめたお題なのに、残念。
けど、そこで思い出したのが、ライ。
ライは普段から顔出しして、ダンス動画を投稿してるインフルエンサーなんだ。
ライなら、今回のチャレンジだって、顔出ししてもいいよね。

「オレが顔出ししてるのは、ダンスのためだぞ!」
「そうだけど、まあ細かいことは気にしないで」
「するさ!」

ギャーギャー言い合うわたしたち。
横ではクルミくんがそれを、にこにこしながら見てる。
「やっぱり二人、気が合うね」
「「どこが!?」」
って、ライとわたしの声がハモった。
気が合うどころか、しょっちゅう衝突してる気がするんだけどー!?

「それでライ、どうかな? 気が進まないなら、もちもん無理しなくていいけど」
「なに言ってんだ。ユウのたのみをオレが断るわけねーだろ。まかせろ!」
「ほんと? ありがとう、ライ」

胸を張るライに、クルミくんがお礼を言う。
さすが、クルミくんにはやさしいねえ。

「じゃあ、パンは用意してあるから、これ使って」
「ああ……って、これドーナツじゃねーか。こういうのって、ふつう食パンなんじゃねーの?」
「ふっふっふ。だからだよ! たしかに食パンが定番だけど、あえて別のパンでやってみるのもおもしろいでしょ。それにドーナツなら、別のお題もいっしょに達成できそうなんだ」

別のアオハルチャレンジっていうのは、ほしレモンさんがくれたお題、# 放課後買い食い と # ドーナツおいしい♡
パンくわえて走ったあとにみんなでドーナツ食べたら、これらのチャレンジも達成できるってわけ!

「なるほど。一度に複数のチャレンジを、同時クリアしようってわけだな。おもしれー」

ライも乗り気みたい。
ドーナツは何種類か買ってきてたけど、ライは甘くて、もちもち食感のドーナツを選ぶ。

ドーナツを口にくわえて、全力でダッシュ!
漫画で見るような光景は、シュールで、わたしはスマホ、クルミくんは愛用のカメラを向けて、シャッターを切った。

「もごもご……どうだ、ちゃんと撮れたか?」

ドーナツを口にふくみながら、ライが聞いてくる。
わたしの撮った写真は、ちょっとブレちゃってるや。

「あはは、なんだよこれ。ブレブレじゃねーか!」
「しょうがないでしょ。走ってる人を撮るのって、難しいんだよ!」
「でも、ドーナツをくわえてるのはちゃんとわかるから、大丈夫だよ」

フォローしてくれるクルミくん。
そのクルミくんが撮った写真はというと、ドーナツをくわえて走ってるライが、くっきり写ってた。

「さすがクルミくん。わたしが撮ったのとはぜんぜんちがうなあ」
「そう落ちこむなって。ユウは天才なんだから、差が出たってあたりまえだよ」
「たまたま上手くいっただけだよ。じゃあさっそくポストして……あれ?」

スマホを操作していたクルミくんの手が止まる。

「どうしたの?」
「いつのまにか、# パンをくわえて走る のポストが、かなり増えてるんだ」
「え、でもこのチャレンジ……」

顔を隠さなきゃいけないから難しくて、やってる人が少なかったのに。
もしかしてみんな、身バレするのもかまわずチャレンジしちゃったの!?
って思ったけど…………ちがった。
# パンをくわえて走る のタグで投稿されてる写真は……。

「見てよこれ。お面で顔を隠してパンくわえてるよ。器用だなあ」
「こっちは、ガッツリ仮装メイクしてる」
「すごっ! アニメキャラのコスプレしてる人もいる!」

ポストされてる写真はどれも、あの手この手を使って、もとの顔をわからないように工夫したものばかり。
変装だの仮装だの、まるでハロウィンじゃない!
あ、知り合いのキヨマサさんも、顔に包帯をぐるぐるまいた写真をポストしてる!
まるでミイラか透明人間。
それがパンをくわえているから、よけいにシュールだ。
おもわず、声を出して笑っちゃった。

「なぜこんなことになってるか、原因がわかったよ。火花さん――青春仕掛人さんが、『ポストするときは身バレに気をつけて』って呼びかけたでしょ」
「あ、うん」

だって、アオハルチャレンジがきっかけで、トラブルになったらイヤだもの。

「だからね、みんな、どうにかして身バレせずにパンくわえてる写真を撮ろうとして、その結果、こんなことになったみたい」
「これってもう、パンがどうこうじゃなくて、どんな格好で撮るかがメインになってねーか?」
「趣旨変わってるよ!」

わたしは、身バレしたら大変だからって思って注意しただけなのに、まさかこんなことになるなんて!
――――けど、これはこれでありかも?

「オレらも、なんかやってみるか」
「チャレンジ写真は、もう撮ったのに?」
「それとは別にだよ。同じチャレンジを何度やったっていいんだろ?」
「だね。これなら、千鶴たちもさそえるし」

予想外の方向に盛りあがってるけど、それもおもしろい。

アオハルチャレンジを盛りあげるのは、青春仕掛人のわたしじゃなくて、チャレンジする人たち。
最初、考えてたのとは方向性がちがったけど、みんなの自由な発想に、わたしは胸をわくわくさせるのだった。

(おしまい)

4話め以降も、公開予定。またお知らせします。
本の感想といっしょに、あなたのアイディアも待ってるよ!

『アオハル100% バチバチ!はじける最強ライバル!?』にも #読者の考えたアオハルチャレンジ が1作入ってるよ!

な ん と!
「#読者の考えたアオハルチャレンジ」から生まれたスペシャルストーリーは、この本にも1作、入ってるよ!
本では、だれのお題が採用されているのか、ぜひチェックしてね!


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