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超注目の新サバイバルシリーズ
『人生デスゲーム 命がけの生き残り試験』を
先行ためし読みしよう!!(全3回)
「すべてが思い通りになる人生」が
手に入るとしたら、きみはどうする?
親や先生に言われて勉強はしてるけど、
行きたい学校も将来の夢も、決まってない。
なんだかものたりない毎日。
そんなリョウのもとに、一通の招待状が届く。
それは、「選ばれた100人の小学6年生」だけが受けられる試験。
合格すれば、進学から、仕事、お金まで
「すべてが思い通りになる人生」が手に入るらしい。
しかし、会場に閉じこめられたリョウたち参加者に告げられたのは、
『試験に失敗すれば、人生を奪われる』という恐ろしいルールだった!
合格者はたった1人。
降りかかる難問と強敵を前に、
この呪験<じゅけん>を生き残ることはできるのか――!?

プロローグ 命がけの最終問題
真っ暗な部屋の真ん中。
床に描かれた白い四角い枠の中に、ひとりの少年が立っている。
ほかにはだれもいない……もう、いなくなってしまった。
【それでは、最終問題です】
どこかにあるスピーカーから機械的な音声が流れる。
ふとももをなぐって、足のふるえを必死におさえた。
「これさえ正解すれば、思い通りの人生が待っている……思い通りの人生が待っている……」
何度もくりかえして、自分に言い聞かせる。
――――じゃあ、もしまちがえてしまったら?
「ダメだダメだダメだ! 考えるな!」
暑くもない部屋で、ダラダラと冷や汗を流しながら少年がさけんだ。
そんな彼の気持ちなんか気にすることなく、スピーカーから問題が告げられる。
【電話を発明した人はベルさんである。〇か×か】
「な、んだよ……それ」
少年の口がぶるぶるとふるえだした。
「そんなの知らねえよ……どっちだ……どっちだ……あーもう! わかんねえ!」
【解答時間、残り10秒。9、8、7、6、5、4、3、2】
音声は感情もなくカウントダウンをはじめる。
少年は全身をふるわせながら、小声で「マル……」とつぶやき、首をふった。
「いや、バツだ! 答えは『×』!」
――――解答終了。不正解です。
……ガタン。
その瞬間、少年の足もとが開かれる。
「いやだあああああああ!」
床が抜けて、真っ逆さまに落ちていく少年の叫び声が部屋に響いた。
パタン。と開いた床が元にもどると、何事もなかったかのようにスピーカーの音声が響く。
【呪験番号82番、不合格。これにて『呪験』終了といたします】
音声に反応する者はいない。だれもいなくなってしまった暗い部屋。
プツッとスピーカーのスイッチが切れる音がして、完全に無音になる。
キイイ……と遠くでトビラが開かれると、ひとりの男がため息をついた。
「やれやれ。つぎはもっと出来の良い子どもたちを集めないとだな」
言いながら、パチッと部屋の電気をつける。
「呪験に落ちたら、人生終わりなんだから。もっと必死に問題と向き合わないと」
その部屋の床には、100個におよぶ同じ四角い枠が整然と広がっていた。
「参加者100名。全員、不合格です」
――――男は小さく拍手をしながら、笑った。
1 希望の招待状
小学6年生になったとたんにテストの点数がズンと重くなった。
89点と90点の1点の差がとてつもなく大きく感じて。
なのに、学校のテストも塾の模試も回数が増えるから、心も体もヘトヘトになるんだ。
それでもやめるわけにはいかない。
なんで?
それは……それは。
「なあ、リョウはこの前の模試どーだったんだよ?」
いつもの4人で話していると、直人が僕に聞いてくる。
夜の8時。塾の帰り道。
僕はスマートフォンでゲームをしていた手を止めて、あいまいにうなずいた。
「ま、まあ普通かな」
完全にウソだった。ホントは順位が下がっていた。
すると、直人が僕の手元のスマートフォンをのぞく。
「うわっ! また脱出ゲームのクリアタイム更新してんじゃん! 全国8位ってヤバくね?」
みんなつぎつぎ僕のゲーム画面を見て「マジでゲーム強すぎだよな!」と口にした。
だから僕はそっとポケットにスマートフォンをしまって笑う。
「こんなゲームいくらできたって、受験に受かるわけじゃないし……意味ないよ」
僕が言うと、直人も「まあなー」とうなずいた。
「俺たち、あと半年もしないうちに受験だしなー。そういやリョウはどこ受けんの?」
直人の質問にドキッとしながら、僕はおずおずと答える。
「A中学……」
その答えに、3人とも「はあ!?」とおどろきの声を上げる。
ああ、まただ……また言われる。と心の中でつぶやいた。
「お前マジで言ってんの? ぜったい無理だって! A中学なんてやめとけよ!」
「自分の成績わかってんのか? 考え直したほうがいいって! 相談なら乗るからさ」
「わざわざ落ちるとこ受けてもしかたなくねえ? 今からでも変えた方がいいって」
みんな同じようなことを言ってくる。そう言われるのは最初からわかっていた。
けど、言い返せるような成績じゃないのも本当のことだった。
僕らは同じタイミングで塾に入ったのに、今では僕だけ普通クラスだった。
彼ら3人は、ひとつ上の進学クラス。
一番成績が上の特進クラスに誰が最初に行けるか。なんて話していたのが懐かしい。
もはや、いつから僕だけ取り残されてしまったのかもわからなくなっていた。
A中学なんて僕には無理だ……それは自分がよくわかってる。
でも、親が言うからそこを受けるしかない。
――――なんでできないの? こんなんじゃ受からないぞ? もっとがんばりなさい!
親からも先生からも言われる言葉が毎日、頭をめぐっている。
お前には無理だ。って否定されながら、それでも目指せって矛盾するようなことを言われて。
そんな言葉ばかり耳にしているから、直人たちの反応も最初からわかっていた。
だから教えたくなかったんだけど……友達にウソはつきたくないから言うしかなかった。
すると、直人がとつぜん話題を変えてきた。
「そうだ。知ってる? 全国の小学生から選ばれた人にだけ送られる招待状があるって話」
たぶん僕が悲しそうな顔をしていたから、気をつかってくれたんだろう。
なにそれ? と興味津々に聞くほかのふたりに合わせて僕も顔を向ける。
「俺の小学校でちょっとウワサになってんだけどさ。なんか、どっかのでっかい会社が将来有望な小学6年生を集めて、試験を受けさせてんだって」
試験? と首をひねる僕らに直人はニヤリと笑った。
「しかも! その試験に受かると、思い通りの人生が手に入るんだってよ!」
やばくね? と目を輝かせる直人に、聞いていたふたりが「やべーなそれ!」と声をそろえた。
「たった1回の試験が終わったら、あとは自由に生きていけるなんて最高すぎんじゃん!」
ひとりが言うと、直人は「そうそれ!」と指さす。
「テスト1回で行きたい学校に行けるどころか、その先も自由に生きられて大金持ちの人生が待ってるんだったら、マジで人生で一番頑張れるよな!」
直人の言葉にもうひとりがうなずく。
「ほんとだよな。俺たち、この先あと何回テストやら受験やらしなきゃなんねーんだよ」
たしかにぃ……。と大きなため息とともに、僕らに現実がもどってくる。
夢からさめたところで、いつもの分かれ道にたどりついた。
僕らはそれぞれ別の小学校に通っていて、帰りの方向もここからバラバラだった。
「じゃー、また明日」
おたがいに手をふって、あっさりお別れする。
明日は土曜日だけど、いつもどおり夕方から塾に行く。
受かるはずもない志望校に入るために勉強を頑張る。
そこに入ってやりたいこともないけど。そもそも入れないだろうけど。
将来の夢なんてないけど。ないからこそ、今は勉強を頑張る時なんだって親に言われた。
だから僕は小さい頃から塾に通って、勉強している。人生の先の先もわからないまま。
自分はあの学校に行くんだ。行きたいんだ。って思いこもうとしている。
本当は志望校なんて、どこでもいいんだけどな。
なんて、そんなこと誰にも言えないまま僕は今日も家に帰った――――。
「……あれ?」
それは、本当にぐうぜんだった。
いつもなら気にしないはずの家のポストをふと開けてみると、1枚の封筒が入っていた。
「天城リョウ様……ってことは、僕宛てだ」
差出人はドリーム・ピーク・コーポレーション(通称DPC社)。
僕でも知っているくらい、世の中のいろんなものを作っている世界でも有数の大手企業だ。
そんな会社が、いったい僕に何を送ってきたんだろう?
頭の中にさっきの直人の話がよみがえってくる。
「ははっ……そんな、まさか」
口にしながらも、心臓はもうバクバクだった。
急いで家の中へ入り、自分の部屋に飛び込むと、机の明かりをつけて慎重に封を切った。
入っていたのは2枚の紙。
取りだした1枚目を見て、僕の手が少しずつふるえていく。
「これは……やっぱり、直人の言ってたあの……」
そこに書かれていたのは、まぎれもなく僕宛ての『招待状』だった。
「僕が、全国の小学6年生の中から選ばれたって……?」
信じられないけど、全国の将来有望な小学生にだけ送られた招待状が今、僕の手元にある。
「ん? なんか変な絵が描いてあるな……国旗? ドーナツ? なんだこれ? いや、それより直人とかはどうだったんだろう……?」
聞いてみようと思ったけど、思いとどまる。
――――他人に話した場合、ペナルティが科されます。
1枚目に書かれていたこの一文を見て、僕はこのことを親にも話せないんだと気づいた。
ペらりとめくって2枚目を見ると、そこには集合場所と日時が書かれていた。
「明日の夕方じゃないか……」
集合場所は、DPC東京支社の地下5階。
会社に集合ってことは、この招待状は本当にDPC社が出しているらしい。
僕の頭の中に、またいつもの言葉が浮かび上がってくる。
お前じゃ無理だよ。ぜったい受からない。考え直せ。
呪いのような言葉が、頭の中をおおいつくしていく――――けど。
【合格者には望んだものがすべて手に入る人生を保証します】
この一言がどうしても頭から離れない。
「これに受かれば、僕はもう悩まないですむ……」
平凡な僕が受かるわけない。けど、これはきっと人生で1回のチャンス。
もういやだった……まわりからいろいろ言われるのが。
自分にガッカリするのは、これで終わりにしたかった。
机に置いたスマートフォンの画面が光ってる。直人たちと別れてから、僕はまたゲームの順位をふたつ上げていた。そっと画面を消して、直人たちの話していたことを思いだす。
……僕らはあと何回テストや受験をすればいいんだろう?
……たった1回の試験で人生が思い通りになるなら、人生で一番頑張る。
あの時の会話は、たしかに僕も思っていたことだった。
テストが、受験があるたびにこんな思いをするくらいなら……。
僕はもう一度、招待状に目を通した。
「もう二度とこんな思いに苦しまなくてすむのなら……」
――――僕はゴクリとつばをのみこんで、招待状をにぎりしめた。
次回は4月26日更新予定!
試験会場にむかったリョウを待ちうけるものは――!?
本の情報
タイトル:人生デスゲーム 命がけの生き残り試験
作:あいはらしゅう 絵:fuo
ISBN:9784046323583
出版社:KADOKAWA
判型:新書
ページ数:192ページ
定価:858円 (本体780円+税)
発行年月日:2025年5月9日