編集部からのお知らせ

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第4作め❤
みんなが送ってくれたネタをもとに
作者の無月蒼さんが短編を書き下ろしちゃう企画です!

第12回角川つばさ文庫小説賞で〈金賞〉を受賞した『アオハル100%』
# 読者の考えたアオハルチャレンジ
を募集したところ、
ファンレターや、感想投稿から、たくさんアイディアが集まったよ。
寄せられたアイディアで、書き下ろしたSS(ショートストーリー)、さて今回はどんな話?



『アオハル100% # 読者の考えたアオハルチャレンジ』

スペシャルストーリー4☆#夏の花火とゆかたと

川原には、たくさんの屋台がならんでいて。
夜だというのに、たくさんの人でごったがえしている。

だって、今日は花火大会。
わたしは春歌さんの考えてくれたアオハルチャレンジ、#夏の花火とゆかたと をやるために、ここにきたの。
お母さんに出してもらった、あわいピンク色のゆかたを着てきて、準備はバッチリだよ!

「火花さん、待ってよー」

あ、いけない。
人混みをかき分けて歩いていたら、後ろを歩いていたクルミくんと距離が空いちゃってた。
あわてて足を止めると、クルミくんが追いついてくる。

ちなみにクルミが着てるのは、紺色のゆかた。
いつもと雰囲気がちがって、カッコいいの!

「すごい人の数だね」
「うん。何度もきたことがあるのに、まるで別世界みたい」

花火がはじまるまでまだ少し時間あるし、せっかくだから屋台を楽しんじゃおう!

するとどこからか、パンッて音がした。
花火が上がった? 
ううん、ちがう。
射的屋の鉄砲の音だ。

「射的かあ……」
「火花さん、やりたいの?」
「ううん。前にやったことあるけど、外してばかりだったし」

当時のことを思いだす。
まだ小学生のころ、わたしはお兄といっしょにこの花火大会にきてたんだけど。
そのとき、射的に挑戦したの……。

◇◆◇◆

当時のわたしも、あわいピンクの浴衣を着てたっけ。
射的屋で鉄砲をかまえて、ねらうは景品台の真ん中に座ってる、もちウサギのぬいぐるみ。
ラブリーなもちウサギを、絶対ゲットするんだーって、いきごんだんだけど、タマは全部外れちゃったんだよね。

一発も当たらないなんて、くやしい~!
けど、ちょこんと座ってるもちウサギのつぶらな目を見てると、どうしてもまっすぐにうてない。
もちウサギがかわいそうで、タマを当てるのをためらっちゃうの。
よくよく考えたら、射的の景品にぬいぐるみって、相性わるくない? 

とにかく、わたしじゃもちウサギをうつのは絶対にムリ!
けど、お兄なら……。

今日はお兄もいっしょにきている。
今はたこ焼きを買いにいってるけど、もどってきたら、わたしの代わりに、もちウサギを取ってって、お願いしてみよう。
それまで、だれかにもちウサギを取られなきゃいいんだけど……。

──パァン!

わたしの願いもむなしく、銃声とともに、景品台の上に座っていた、もちウサギの体が、宙に飛んだ。

「も、もちウサギぃ~~~~~~~~~っ!!!!!」

思わず声が出て、まわりにいた人たちが、ビックリしてこっちを見てる。

もちウサギをゲットしたのは、わたしと同い年くらいの、クセッ毛の男の子だった。
もちウサギをうつくらいだから、どんな悪そうなやつか!!!
――と思ったけど、あんがい、おとなしそうでかわいい子。

すると、その男の子は、声を上げたわたしをじっと見てきた。

「…………きみ、これほしいの?」
「え?」

取ったばかりのもちウサギを、両手でかかえて見せてくる。
そ、そりゃあ、ほしいよ!?

「……あげる」
「えっ?」

男の子は、もちウサギをつき出してきた。
けど……いやいや、ちょっと待って。

「これ、君が取ったんでしょ。もらえないよ」
「ボクはたまたま、この子が目についたから、あてただけなんだ。
でも、きっと君のほうが、この子を大事にすると思うから。
この子だって、君にもらってほしいって思ってるよ」

言いながら、ぬいぐるみの手を取って、もちウサギが手をふってるみたいに動かしてくる。
うう~、そういうかわいいことされると、決心がゆらいじゃうじゃない!
で、でもこの子、あげるって言ってるし。
あたしも、スッ…………ゴク!ほしいし……。

「ほ、本当にくれるの? もらってもいいの?」
「うん。はい、どうぞ」

もちウサギを、笑顔で差しだしてくる男の子。
もちウサギをもらえたのは、もちろんだけど。
けどそれ以上に、その子のやさしさが、うれしくて……
わたしは、受けとったもちウサギを、胸にギュッて抱きしめた。

「ありがとう……大切にするね!」
「うん。……おまえも、いい人にもらわれてよかったね」

ニコニコしながら、あたしの腕の中のもちウサギの頭をなでる男の子。
ふふっ、まるで本物のウサギにむかって声をかけているみたい……。

「おーいユウー! なにやってんだー」
「あ、ライ。いまいくー!」

いまのは、友だちの声かな?
きこえてきた声に、目の前の男の子が、返事をする。

「それじゃあ、その子をよろしくね」
「う、うん。ほんとにありがとうー!」 

人混みに消えていく男の子に手をふりながら、わたしはもう一度お礼を言った。

◇◆◇◆

……なつかしいことを。思いだしちゃった。
あのとき、男の子からもらったもちウサギは、いまでも部屋にかざってある。
わたしの大切な宝物だ。
あの男の子、今ごろどうしてるかな……と、わたしが心の中でつぶやいたとき。

「あの子ともちウサギ、どうしてるかな……」

クルミくんが、小さい声で、なにかつぶやいた気がしたけど。
それと同時に、ドーン!という大きな音がかぶさって、よくきこえなかった。

花火がはじまったんだ!

空を見上げると真っ暗な中に、赤い大きな花が咲いている。

「キレイ……あ、写真撮らなきゃ」
「うん。……でも、いまはカメラごしじゃなくて、自分の目で、この花火を見ておきたいかも」
花火を見あげたまま、クルミくんが言う。

それもそうか。
このキレイな花火を写真に残したいけど、花火ははじまったばかり。
あせらなくたって、いいよね。

夜空には、黄色や青など色とりどりの花火が、つぎつぎに咲いていって。
わたしたちは、いつまでも、そのあざやかな光景に、目をうばわれていた。

おしまい

5話め以降も、公開予定。またお知らせします。

本の感想といっしょに、あなたのアイディアも待ってるよ!

『アオハル100% バチバチ!はじける最強ライバル!?』にも 
#読者の考えたアオハルチャレンジ の小説が1作、入ってるよ!

な ん と!
「#読者の考えたアオハルチャレンジ」から生まれたスペシャルストーリーは、
この本の中にも1作、入ってるんだよ!
本では、だれのお題が採用されているのか、ぜひチェックしてね!


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