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発売前から大人気の、注目新シリーズが発売!
「お天気係におねがい!」はもう読んだ?
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<あらすじ>

わたし、天川空。5年1組の“お天気係”なんだ。
ある日うっかり、お天気神社の大事な鈴をこわしちゃって――
天気をあやつる、神さまの力を手に入れた⁉

かわりに力をうばわれた元・天気の神さまたち、
ハレアメフウライくんがいうには
みんなのお願いを聞いて、正しく天気をあやつれないと
わたしたち全員、神さま失格で地獄行き⁉

さっそく届いた「運動会を晴れにしてほしい」ってお願い、
じぶんに自信がないわたしだけど・・・カクゴをきめた!

みんなの願い、お天気係(わたし)がかなえてみせるよ!


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登場人物紹介だよ☆


読むと『お天気男子』たちのことがもっとわかっちゃう!?
トクベツ書き下ろしエピソードを公開☆

『リベンジ! カレーライス』



「――なっ……なりたい! わたし、1位になりたい!

 やっと、運動会の目標――わたしの中の熱くなるココロが見つかった。

「一歩前進だな」

 ハレくんは、そう言ってくれた。ほかのみんなも、賛成してくれた。

 これから本格的に、訓練がはじまるんだ――。

 ギュルルルッ!

 とつぜん、ハレくんのお腹の音が、帰り道にひびいた。

「くそっ……腹へった」

「あっ、そっか。給食、食べられなかったから……」

 今日はカレーライスだったんだけど、ライくんにだめって言われたんだよね。みんな元々は神さまだから、今まで口にしたことがない給食を食べたら何が起こるか分からないって。

 それでいろいろさわぎになって、わたしも食べられなかった。だから、ハレくんの気持ちは分かる。

「ねえ。ふだんはみんな、なにを食べてるの?

 ふっと気になって、聞いてみた。

「カレーも食べられないなんて……。夜雲さん、料理上手だし、いろいろ作ってくれるでしょ? どうしてるの?」

「それが……」

 アメくんがこまったように、うすく笑う。

 そのとなりで、ライくんが咳払いをする。

手作り料理なんて、ぜったいに食べちゃだめだ。なにが入ってるか、分からないだろ。体にどんな悪いことが起こるか……」

「って、ライが言うんだ。だからぼくたち、お供え物で慣れてるおまんじゅうお団子最中とかばっかり食べてるんだよね」

「ええ! ま、毎日食べてるの?」

「あたりまえだろ。ご飯は、毎日食べるもんだろ」

「ハレくん、そういうことじゃなくて……」

 ていうか、おまんじゅうってご飯じゃないし。

 つまり、毎日お菓子だけ食べてるってことだよね? そっちの方が、体に悪すぎるよ~。

 ライくんの意見も分かるけど、お菓子の食べ過ぎで、みんなが体をこわしてたおれちゃったら、たいへん!

 な、なんとかしなくちゃ……。

「あっ、そうだ! だれかに作ってもらった料理が不安なら、じぶんたちで作るのはどう?

「「「「えっ?」」」」

 ハレくんたちはそろって、首をかしげる。

「なんで、そうなるんだよ」

「だって、どんな材料を使って、どういうふうに作ったのか分かれば、だいじょうぶって安心できるでしょ? 味も、途中で確認できるし」

「それは、そうかもしれないが……」

「でも、オレたちに作れるのか?」

カレーライスなら、だいじょうぶだよ~。わたしも、おばあちゃんと作ったり、学校でみんなと作ったりしたことあるもん」

「たのしそうじゃん! おれ、料理ってやったことないから、やってみたい!」

 フウくんが、まっ先に手をあげる。

「ぼくもやってみたい」アメくんが、笑顔でうなずく。「せっかく人間の体になったんだし、いろんな体験がしてみたいな」

「ハレくんと、ライくんは?」

「オレもやる。昼に食べられなかったから、リベンジしてやる」

「ん……。俺は賛成しきれないが、みんながやるなら、いっしょにやらないとな」

「じゃあ、決まりね! 今日の夜ご飯は、カレーライスね!


                        ***


 家に帰って荷物を置いてから、すぐに夜雲さんに事情を話した。「ぼくも心配してたんだよ。お菓子ばっかりじゃあ、よくないなあって」って、すぐに賛成してくれた。

それから、「作るときは、包丁と火に注意してね」ってやさしく言いながら、材料用のおこづかいをくれた。

 そして今、5人そろって、街のスーパーまでやって来た。

「ここはどこだ? すげーでかい建物だな」

「ここは、スーパーだよ。作る前に、材料を集めないとね

 カートにカゴを入れて、いよいよ中に入る。

 お天気男子たちは、ちょっとそわそわ緊張している。

「うわ~。なんだか、にぎやかなお店だねえ。ぼく、ちょっと感動するんだけど」

「おれは、わくわくする♪ 食べ物いっぱい! しかも、どれもおいしそう~~~!」

フウ、走るな。スーパーは物が多い上に、大きな棚ばかりならんでいて、なかなか危険な場所みたいだ。気をつけろ」

「それで、空」ハレくんは、きょろきょろしながら言う。「どうやって、材料を集めるんだ?」

「カンタンだよ。必要なものを、このカゴの中に入れていくんだよ。まずは、野菜を買おう

 入ってすぐにある、野菜コーナーに進む。

「玉ねぎは……あった。切るとき涙が出ちゃうのがつらいけど、カレーには外せないもんね」

涙が出る……? 空、まて」

 カゴに入れようとしたら、ライくんに止められた。

かなしくもないのに、涙が出るのか? 目に、なにか攻撃を受けるのか? それは安全なのか?」

「安全だよ! なんていうかなあ、そういう野菜なの。ねえ、アメくん?」

 ふり返ると、なぜかアメくんは、すでに泣いていた

「どうしたの⁈」

「見て、空ちゃん。このじゃがいもたちは、農家の人たちが、すごく愛情を込めて育てたって書いてあるよ。きっとすごく大切に、育てたんだろうね……。じゃがいもも、切らなきゃいけないの?

「もちろん」

「そんな。ぼくにはそんなかわいそうなこと、できないよ。まるごと入れたら、だめかな?」

「アメくん……。切らなかったら、わたしたちがかわいそうなことになっちゃうよ。それに、じゃがいもだって、ちゃんと食べやすいように切って、おいしく作ってあげるほうが、農家の人たちもよろこぶよ」

 こんな調子で、買うものひとつひとつを説明しなくちゃいけなくて、すごく時間がかかっちゃう。

 まあ、でもこれも、カレーは安全でおいしい料理って知ってもらうためだよね!

 ハレくんたちには、いろんな料理を知ってもらって、健康でいてもらはなくちゃこまるしね。

「ふう。これで必要なものはぜんぶ、そろったかな」

 いっぱいになったカゴを見て、うなずく。

「よしじゃあ、レジに――」

「まって、まって! これも入れて!」

 フウくんが、大量のお菓子を持ってきてかと思うと、どさっとカゴの中に入れた。

「このお菓子、1番人気って書いてあった! みんなで食べよう!」

「フウくん! わたしは、みんなにちゃんとご飯を食べてほしくて、スーパーに来たのっ。お菓子はだめ! 返してきて」

「え~。そらりん、きびしい~。ちょっとくらいいいじゃん」

「ぜんぜんちょっとの量じゃないよ⁈」

「いいかげんにしろよ、フウ。お菓子は今いらない。空の言うとおり、さっさと返してこい」

 ハレくんが、フォローしてくれる。

オレたちは、先に行ってるからな

 ハレくんはカートを引っ張って、出口に向かおうとする。

 わたしは、あわててつかんで、止めた。

「ちょっ、どこ行くの?

帰るに決まってるだろ」

レジでお金を払ってからだよ!

「なんだ、もらえないのかよ。ケチだな」

「ケチじゃなくて、あたり前のことなのっ」

 もお~。まさか、買い物だけでこんなにバタバタするなんて……。

 わたしたち、ちゃんと作れるのかな?


                      ***


「――じゃあ、いよいよ作るね」

 ふだん、夜雲さんとお天気男子たちが暮らしている家の台所で、お料理スタート

 炊飯器はスイッチを入れてあるし、ご飯の準備はばっちり。問題はカレーだけど、水洗いと皮むきまでは順調にできた。

「じゃあつぎは、野菜を一口サイズに切るよ」

 ハレくんはにんじん、アメくんはじゃがいも、ライくんは玉ねぎ。

「フウくんは、いっしょにお肉をいためるから、まっててね」

「オッケー」

「3人とも、指を切らないように気をつけてね。さっき言ったとおり、野菜をおさえる方の手は猫の手で……って、ライくん! そのミトンはなに⁈

「だから、指を切らないようにするためだ」

「そんなのつけてたら、野菜が切りにくいよ。気をつければだいじょうぶだって」

「もちろん、俺は気をつける。でも、となりにいるハレ道具のあつかいが雑だから、巻き込まれるかもしれない」

はあ⁈ じぶんがビビりなのを、オレのせいにするな!」

「ビビりなんじゃなくて、慎重なだけだ」

「2人とも、お願いだからケンカしないで~~! アメくん、止めて……」

ごめんね、切ったりして

 アメくんはじゃがいもに話しかけながら、すごくていねいに切っている。

 だけど、流れるなみだまでかかっちゃってる。

「でも、これがきみのためだから……うぅ。ぜったい、おいしくつくるね」

「アメくんっ。なみだをふいて――ん? なんか焦げくさいような……ああ!

 いつの間にか、フウくんがお肉をいためはじめていた

「フウくん、いっしょにやるって言ったのに! あわわっ、油ひいてないし火が強すぎて、焦げてる……」

「えっ、なに? もっと火強くする?

「十分だよっ。ていうか、消して消してっ」

 お肉が……。おなべの中を見て、がっくり肩を落とす。

 ハレくんとライくんはまだにらみ合ってるし、アメくんはなみだが止まらないし……。

「みんな、わたしの話を聞いてーーーーーーーーー!」

 台所に、わたしのさけび声がひびいた。



                        ***



「なんとか、できた……」

 いろいろあったけれど、無事にカレーは完成

 お皿に盛りつけて、やっと食べられる。

「給食で見たカレーと、同じだ」

 ハレくんは目をきらきらさせて、さっそくスプーンですくう。

 大きく口を開けたとき、ライくんが「まだだ」って止めた。

「俺がさいしょに食べて、安全を確認する

 ライくんはそう言って、慎重にひとさじすくう。においをかいでから、おそるおそる口の中に入れる。

「!!」

 目を見開いて、かたまっちゃった。

「ど、どうしたの? だいじょうぶ、ライくん?」

「なんだよ、ライ。なんか言えよ」

「もしかして、ぼくたちには食べられない……?」

「ライってば、なんか反応してよ」

 フウくんが、肩をつつく。ライくんが、はっと我に返る。

「……だいじょうぶだ、みんな。すごく、おいしい

 ライくんは冷静に、でもはっきり言った。

「ほんと? やった!」

「それならはやく言えよ。オレも食べる!」

 ハレくんは止めていたスプーンを持ち上げて、パクッと食べる。

「うまい!」

「ほんとうだ。とってもおいしいよ!

 アメくんも目を丸くしながら、感心したようにうなずく。

おれも食べれる~~! 口の中、ヒリヒリしない~~」

「フウくん、からいのが苦手みたいだから。りんごをすりおろして入れてみたよ」

 ハレくんたちがおいしそうに食べているのを見て、ほっとする。

 わたしたちがふだん食べている料理、気に入ってもらえたみたい。

 これで、これからは、お菓子ばっかりじゃなくて、ちゃんとご飯を食べてもらえるかな。

「ていうかさ、空」

 ハレくんがぺろっと一皿平らげてから、わたしを見た。

カレー作りの間、ずっと堂々としてたじゃん。学校にいるときは、大ちがいだったな」

「えっ、そうかな? なんか、料理は、準備したり作ったりしてる時間がたのしいんだよね。ふだんも、お菓子を作るし。それにカレーは、おばあちゃんが初めて教えてくれた料理で、何回もいっしょに作ったから、ちょっと自信があるっていうか……」

 少しおばあちゃんの姿を思い出して、ぎゅっとスプーンをにぎる。

 わたしのパパとママは仕事で帰りが遅くて、いっしょにご飯を食べられないことも多い。それがさみしくて、あんまりご飯の時間が好きじゃなかった。

 でもおばあちゃんが、「パパとママをびっくりさせよう」って、いろんな料理の作り方を教えてくれて、たのしい時間に変えてくれたんだ。

 おばあちゃん……。

「だいじょうぶ、空ちゃん? なにか、かなしいことでもあった?」

「へっ? ううん、ちがうよ。ていうかわたし、大げさに言っちゃった。自信があるっていっても、カレーは、ほかのみんなも作れるからね。べつに、すごい特技でもないから……」

「なに、おかしなこと言ってんだ。こんなにうまいカレーが作れるなら、立派な特技だろ」

 ハレくんは強い口調で言った。

「そうだよ~。からくないカレーを作れるなんて、そらりんは天才だよ!」

「空ちゃんは、ぼくたちのことを心配して、いろいろがんばってくれたんだよね。ほんとうに、やさしいよね

空のおかげで、人間の生活にもはやく慣れそうだな」

「みんな……」

 ハレくんたちの言葉はちょっと照れくさくって、でもココロがうれしくなる。

 みんなとのカレー作り、たいへんだったけど、すごくたのしかった。カレーを作ってこんなにたのしい気持ちになったのは、おばあちゃんが生きていたとき以来かも。

 もしかしたら。もしかしたらだけど。

 おばあちゃんが、ハレくんとわたしたちを出会わせてくれたのかも……なんてね。

 わたしも、スプーンですくって食べる。

 みんなで作ったカレーは、甘くてとくべつな味がした。



                         ***



 ――よくじつ。

「みんな、おはよう!」

 ハレくんたちと合流して、学校に向かう。

 ふんわり、まだきのうのカレーの匂いがした。

「なんか、まだカレーの匂いが残ってるね。きのう、いっぱい食べたから」

さっきも食べてきたけどな

「……え」

 ハレくんのまさかの発言に、足が止まる。

「さっきって……朝ごはんにってこと? でも、きのうのカレーは、ぜんぶ食べきったよね?」

「ああ。だから夜雲に、作ってもらった

「きのうのカレーもおいしかったけど、夜雲の作るカレーもめっちゃおいしかったよん♪」

「夜雲さんのカレーの味は知ってるけど……。みんな、飽きないの?」

「ぜんぜーん! むしろ、ハマったし! 今日の夜ご飯も、カレーだし!

「今日の給食もカレーにならねーかなあ。つーか、毎日カレーでいいな」

 なっ、なに言って……。

「ぼく、カレーについて調べたんだ。いろんな種類があるらしいね。チキンカレー、キーマカレー……。ご飯じゃなくて、ナンっていうパンにつけて食べるカレーは、おもしろそうだったね」

「どのカレーも、安全をたしかめるために、ぜんぶ作ってみるか

 わたし、みんなに健康な生活をしてほしくって、カレーを作ろうって提案したんだけど……。

 これじゃあこんどは、永遠カレーから抜け出さないよね? それも、すごくまずい!

「じゃあ今日も、学校が終わったら、すーぱー? に行こうぜ。なあ、空……」

「行きませーーーーーーーーん!」



 みんなのツボが分からない……。

 やっぱり、神さまたちの生活って、たいへんだよ~~~!!!


トクベツ書き下ろしエピソード『リベンジ! カレーライス』おしまい


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