編集部より
角川つばさ文庫の伝説級ヒット☆『いみちぇん!』でおなじみの、あさばみゆきさんのフェアが開催中!
フェアを記念して、ここでしか読めないスペシャルなSSを大公開!
第二弾は、角川つばさ文庫の伝説級☆人気シリーズ
『いみちぇん!』のスペシャルショートストーリー!
超豪華なあさばみゆきさんの書き下ろしSSを楽しんでね!
<あらすじ>
今日はちーちゃんが朝からずーっと家にいてくれたから、りんねはごきげん。ママにおつかいを頼まれた帰り道、公園によりみちしたよ!
ちーちゃんと大冒険!
今日はちーちゃんが、ずーっとおうちにいてね。
い~っぱいあそんでくれたんだよ。
トリさんとお昼寝して、起きても、まだ、ちゃぁんといてくれたの。
それでね。ママが「お買いものお願いできる?」って。
牛乳とぉ、食パン(六まいの!)とぉ、それから、好きなおやつを一つ!
「本当に、それでよかったのかい?」
「うん!」
買いものぶくろをさげたちーちゃんは、りんねを見おろす。
りんねは、自分で持たせてもらった「おやつ」を、しっかり両手でにぎる。
「まだいるかなぁ?」
「いるといいね」
りんね、さっきスーパーに行くとちゅうで、公園で見たんだよ。
シマシマもようの、かぁわいい、ネコ!
自分のおやつのかわりに、ネコ用のおやつを買ってもらったの。
一番おいしそうなのを選んだんだけど、気に入ってくれるかなぁ。
ヨシヨシさせてくれるかなぁ。
はやく公園につきたくて、スキップしながら、おやつのふくろに書いてある字を読む。
「まぐろ! かつお! さーさーみっ。ちーちゃん、これはなんて読むの? まぐろケケ」
「どれだい? ……ああ、まぐろ節だね」
「まぐろブシ? まぐろのおさむらいさん?」
「ハハ。りんねは思いも寄らないことを言うね」
ちーちゃんが声をだして笑う。
りんねはちーちゃんを笑ったのが、とってもうれしくて。
いっしょに、えへへへ~っと笑う。
〝まぐろブシ〟がホントはなんだか、わからないままだけどね。
「あ! いた! ちーちゃん、はやくっ、はやく!」
ベンチの下に、さっきのシマシマネコ、まだいる!
りんねがその場で足ぶみすると、ちーちゃんは、まぐろ味のスティックを一つ、開けてくれた。
それを持って、そーっとそーっと近づく。
「ネコさん、どーぞ」
ネコはすんすんにおいをかぎながら、しっぽをさげて、ちょっとずつこっちに出てくる。
ずいっとうでをのばすと、ちょっと逃げそうになっちゃったけど、まぐろのいいにおいがしたんだ。
「ネコさん、まぐろ好き? おいしいよ。りんね、手巻きずし好きよ。おいしいよねぇ」
ちーちゃんもとなりにしゃがんだ。
スティックをギュッと指で押すと、中身が出てくる。
ネコは、いったんぺろっとしたら、もう夢中!
ぺろぺろぺろぺろ、りんねの手まで、いっしょになめる。
ネコのべろ、ざりざりしてるっ。
くすぐったくて、うふふって笑っちゃう。
ちっちゃいなぁ。かぁわいいなあ。
ちーちゃんもやってみる?
聞こうとしたら、ちーちゃんは、スッと立ちあがった。
「――宇津木先生」
「藤原さん。こんなところで、偶然ねぇ」
知らないおばあちゃんが、公園に入ってくる。
りんねは、ぱっと下をむいた。
先生? ちーちゃんの、中学校の先生かなぁ。
「お買いもの? あなた、こんなに小さな妹さんがいたのねぇ」
「ええ。りんね、ごあいさつは?」
「……」
だって、ちょっとコワそうなおばあちゃんだったよ?
やだなぁ。りんねとちーちゃんのお買いものだったのになぁ。
だまっちゃったりんねに、ちーちゃんはちょっと笑って、「先生」と、なにかおしゃべりする。
りんねは聞こえてないフリで、ネコのべろと、ぐいぐいおやつを取りあげようとするお手てを、ジッと見つめる。
「妹さんは、あんまり藤原さんに似てないのねぇ」
りんねは顔をあげた。
先生と目が合った。
おばあちゃん先生は、自分もどきっとしたみたいに、目をそらした。
「――もうお行き」
ちーちゃんが先生の目を見つめて、しずかに、言う。
ばささっと大っきな音を立てて、ハトさんたちが空に飛んでった。
まわりが急にシーンとする。
先生が、ふらっとうしろに下がる。
ふら、ふら、そのまま、公園から出ていく。
あれぇ。バイバイも言わないで、行っちゃったよ?
「……おや、やりすぎた。猫まで逃げてしまったか」
ちーちゃんが、またわたしのとなりにしゃがんだ。
「あぁあ!」
ネコ、いない!
りんねはバッと立ちあがる。
ネコは公園のお外の、おうちとおうちのあいだのカベに、するっと入っていっちゃう!
「ネコさん……」
りんねのおやつ、まだ、いっぱいのこってるのに。
「ネコ、行っちゃったぁ」
「追いかけるかい?」
「でも、あそこ、りんねもちーちゃんも入れないよ」
カベのあいだは、すごくせまい。
ちっちゃいネコのあたまが、ぎりぎり通るくらいだもの。
ちーちゃんは、しゃがんだヒザにほおづえをついて、ふむって言う。
枝をひろって、「クイズをしよう」って。
「クイズ?」
「そう。りんねは、このクイズを解けるかな」
ちーちゃんが地面にさらさら文字を書く。
子子
「りんね読めるよ! 子どもの『コ』!」
「当たり。でも、『ココ』じゃない。ヒントは、さっきいた動物だ」
「ネコ?」
「ふふ。そうだよ。『子』という漢字には、ネズミを表す『ネ』という読みもある。だからこれは『ネコ』とも読めるね」
ちーちゃんは枝を置き、にこっと笑う。
「正解したりんねにごほうびだ。魔法をかけてあげよう。ただし、少しの間だけね」
どこか遠くの方で、トリさんがカァッって鳴いた。
ダメですよって言ってるみたい。
ちーちゃんはちょっと笑って、りんねに「目をつぶっておいで」って。
おっきな手が、りんねの目をかくす。
りんねはうなずいて、ぎゅぅっとまぶたをつぶって、「魔法」を待つ。
ヒヤッと冷たいのが、おでこにくっついた。
まぶたのむこうに、ぱああっと赤い光が、きらきらして――。
『開けていいよ』
目を開けたら、そこに、ちーちゃんじゃない。
ネコがいる。
さっきのシマシマネコよりも大きな、すっごくきれいな黒ネコさん。
『ちーちゃん、ネコになっちゃったの!?』
びっくりしたりんねは、もっとびっくりした。
地面においてあるお買いもののふくろが、すっごくおっきい。りんねよりおっきい!
『りんねもかわいい子猫になったね』
りんねの手が、うす茶色の、ふわふわの、ちっちゃなお手て!
魔法、すごい!
りんねネコは、ちーちゃんネコと、トトトッと走る。
カベのあいだにするする入って、シマシマネコをおっかける。
ネコ、すごい!
だれかのおうちのお庭をくぐって、ぴょんぴょん、へいの上にとんで、シマシマネコのにおいをたどる。
だけど、あれっ。くずれたガレキでできた、ちっちゃいトンネルの中に、においが続いてる。
『ちーちゃん、ここ、入れる?』
『これは無理そうだね。もっと小さくなろう。「子子(ネコ)」を、一字とって「子(ネ)」にしてしまえば?』
『ネズミさんの、ネ!』
りんねたちは、「魔法」で、もっとちっちゃいネズミになった!
おしゃべりすると、チュウチュウって音がでるのっ。かぁわいい!
まっくらでしめったトンネルを、ドロをびちゃびちゃハネながら、シマシマネコに続く。
明るい外が、見えてきた。
『ネコさん、まってーっ!』
トンネルから飛びでる。
その、とたん。
バサッ。
外に出たのに、まわりが、真っ暗になった。
おおきな黒いつばさが、りんねとちーちゃんの上で、はばたいてる。
『トリさん』
むかえに来てくれたのかなぁと思ったら、ちがう。
足がみっつじゃない。
ベツの、ふつうのカラス!
今のりんねがネズミだから、トリさんくらい、おっきく見えるんだ。
ぎらりと光る目と、ばちっと目があっちゃった。
カラスがまっすぐ、こっちに下りてくるよっ。
とがったクチバシが、りんねにささりそう!
『「子」には「シ」という読みもある。二つ重ねれば――、』
ちーちゃんネズミが、りんねのすぐ後ろで、チュウッとなく。
もう、食べられちゃう!
キャア! ――って、悲鳴をあげたつもりだったんだよ。
なのに、
ガオォーッ!
地面がふるえるほど、すっごい声が出た。
カラスはびっくりして、ギャアッて大声。
りんねもびっくりして、しりもちをついた。
「子子で、ライオンの獅子(シシ)になるね」
ちーちゃんが、ぽんっとりんねのあたまをなでる。
もうネズミじゃなくて、人間の、いつものちーちゃん。
でもりんねは、そのちーちゃんと、同じくらいおっきい。
お手てがもふもふで、うらが黒くて、むっちりしてて。
ちーちゃんが、りんねのもっふもふの背中に手のひらをおく。
「そして最後は、子どもの『子』。『子』を十二個重ねたら、子(ネ)子(コの)子(コ)・子(コ)子(ネ)子(コ)・子(シ)子(シの)子(コ)・子(コ)子(ジ)子(シ)。昔の人が考えたクイズなんだよ」
りんねの「魔法」もとけて、いつもどおりのりんねの手になった。
「魔法の時間は、おしまいだ」
しりもちをついたままのりんねを、ちーちゃんがひょいっと起こしてくれる。
りんねの友だちのトリさんが、さっきのふつうのカラスを、ガァッて追いはらってくれた。
そして――。
シマシマネコ、見っけた!
「ネコさん、いたよ!」
草の中から、ネコはこっちをジーッと見てる。
「さぁ、おやつをあげるんだろう?」
ちーちゃんはりんねの、からっぽの手を見る。
それから自分の手を見て、「おや?」って。
「公園に、買いものぶくろを忘れてきたね」
「あれぇ」
「あれれだね」
おうちに帰ったら、ママはぽかーんと、大きくおくちをあけた。
「ずいぶん大冒険してきたのねぇ」
りんねもちーちゃんも、おクツはどろどろだし、あたまに、葉っぱがくっついてるって。
りんねはちーちゃんの、ちーちゃんはりんねのお顔を見て。
あははーって笑った。
「まぁ。ふたりは笑うと、そっくりね」
そしてママまで、うふふっと笑ったんだ。
<おわり>
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わたし、藤原りんね。
ちょっと変わったものが視える以外は“ふつう”の中学一年生。
平和な学園生活を送りたいから、
みんなの前では、“ふつう”のフリをしてるんだ。
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友達を消しちゃった!?
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想いは廻る。きずなは消えない――
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