※座談会の内容には、一部ネタバレもふくまれているよ! ぜひ、『こちらパーティー編集部っ!』シリーズを読んでからチェックしてね!
さて、第2回は、2代目の担当者Oさんにお話を聞こうと思います。 Oさんって「こちパっ!」2巻から、いきなり担当になったんですよね。
なんか、いろいろ社内のオトナの事情があったんですよ……。
まあ、一応ぼくも、つばさ文庫小説賞には、関わっていましたから。 Tさんの仕事ぶりも知ってたし。 とりあえず、『おもしろい話、集めました。(3)』用に短編を書かれるあたりから担当を引き継いだんですよ。
それ、深海さんにとっては、デビュー直前の一番いそがしいタイミングじゃないですか。 そこで担当者が変わるなんて…鬼ですね(笑)。
いやー、「ぼくがあたらしいお父さんだよ!!」って言われたみたいな。
ドラマチックな展開に、わりとノリノリになった、と(笑)。
ぼくもとつぜん担当になって、どうしようかなーと思っていたら、深海さんから、いきなり職務経歴書(編集部注:おとなになると書く、これまでしてきたお仕事などをリストにしたもの)みたいな資料が送られてきたんですよ(笑)。 「これ、わたしがこれまでしてきたお仕事リストです」って。 まず、それを読むところからはじまりました(笑)
我ながらめんどくさい作家だな! すみません! ……でも、そんなものを送ったことも、今言われるまで、わすれてました!(笑)
「こういう漫画や小説を読んできて、こういうキャラが好きです!」みたいなことが……(笑)。
すぐにいっしょに作らなきゃいけないタイミングだったので。 だって、少し前までTさんと2人で「よーし、1巻が出た!この調子でガンガンやりましょーね!」「おうっ!」なんて言ってたのに、いきなり「あ、わたしは実は部署の事情で担当変わるんで!じゃ!」って言われて…。
それを伝えたとき、深海さんが涙ぐんでしまって、不安にさせて申し訳ないって思いながら……でも、新担当のOさんはやさしくて、しかも優秀だから、ぜったいだいじょうぶって伝えました。
Oさんは打ち合わせのとき、わたしが興奮してこんがらがった宇宙語を話しても、ウンウンって静かにきいたあと、「……それはつまり、深海さんは、こういうものが作りたいってことですね?」って、人間の言葉に通訳してくれるんです。 で、「ああっそれ、それです!」ってなる。
Oさんって、人の考えをまとめるというか、整理するのが上手なんだよね。
たとえば2巻では、私、「パーティー編集部が、ライバルの新聞部と対決する!」っていうのだけは、はじめから決めてたんです。 でもそこで、Oさんに「で?どうやって対決するんですか?」ってきかれて「えっ……」って(笑)。 「あの……、この勝負のルールって、わたしが決めるんですか?」って言ったら、Oさんが「そりゃそうでしょ!!!!」って(笑)。 私、ぜんぜん細かいこと考えてなかったの。
「たとえば、かべ新聞を作って……生徒たちに、いいと思ったほうに花をつけてもらって、その数を数えて……とかですかね?」とおそるおそる言ってみると、Oさんがホワイトボードを出してきて、「三ツ星学園には何人生徒がいて、花はいくつずつ動くんですか?」って。 まるで算数の授業みたいに、勝負のやり方をまとめてくださった。
覚えてる(笑)。 もう〆切まで時間がなかったから、その場でいっしょにルール決めちゃうしかないでしょ(笑)。
「こうすると2勝1敗だから……」なんて、話をして。 「それだとルールが成立しないよ!」って。 「じゃあ、とちゅうで編集部が逆転できるように……」とかやりましたよね。
今考えると……本気で、担当がOさんじゃなかったら、2巻出なかったかもぉぉぉ! (笑)
無事に出てよかったです……っ! そんな「魔の2巻目」を乗り越えて、そこから先は……順調に執筆が進んだんですか?
すみませんっ(土下座)。 偶数巻が……とくにヤバいことが多くて……いや、常にヤバいんですけど……。
でもOさんって、そこから12巻まで、10冊もこちパっ!を担当したんだね。 本当におつかれさまでした! 「お父さん」のおかげです!!
「お父さん」の作った本の中で、特にお気に入りの巻はどれですか?
5巻かな。 地球滅亡について書いてる箇所があって、読者さんも、そこが好きだって言って下さる方が多いシーンで。 1ページで、大きくイラストもつけましたね。
私にとっては、単純にイチャイチャしているシーンを書くより、ずっとあのセリフを書くのがはずかしくて……。 だから、原稿見せるだけでも、勇気が必要だったし。 もしあそこで「ちょっと深海さん、これ、はずかしいこと書いちゃったね」なんて言われてたら飛びかかったと思うけど、Oさんはそんなこと言わずに、淡々と読んでくださって、ほめてくれたの。よかった♡
でも、そこが読者にとっても記憶に残るベストシーンになったんだ。 深海さんが、裸の気持ちで書いた瞬間だったんだね。
5巻の思い出っていうと、ゆのが七ツ星学園に行って、しおりちゃんが編集長になるんです。 私が編集者をやっていたころ、実際にお世話になりまくった編集長が異動されたことがあって……。 「ええええっ⁉ 編集長って異動するのおおっ!?」って、すごくビックリしたのを覚えていて。 あ、ゆのたちでもそれをやってみたい!と思いました。
お話を書くとき、プロット(編集部注:お話を作るとき、じっさいに執筆するまえに考える物語の構想のこと)から変わってしまうことはよくあって。 実際書いてみたら、「思っていたのとちがうな……」って。 ……ぜんぜん物語が楽しくない、これはゆのじゃない!って。 それで、「明るいゆのにおこる、つらいことってなんだろう?」と考えて、もともと予定していた話の流れから、一気に方向性を変えて、「告白公開からの、フラれる」ってお話にしたこともありました!
ほかにも、11巻とか、プロットではトウマ先輩のサイン会がなかったですよね。 だけど、原稿が来たら、イベントやってた!
書いてみたらつまらなくて、あとから書き足したんです。
え……。 でも4代目担当の私になると、そもそも深海さんの原稿は「プロットにないものしか、なかった」気がするんだけど?(笑)
むしろ、私と、5代目担当のYさんは「さいしょに聞いてた展開どおり」になったためしがない担当じゃない?(笑)
最初の3冊くらいは……ちゃんとプロットのとおりになってました? だけど、私は書いていくうちに「こっちのほうがおもしろいかも……!」と思って、予定していた内容から話が変わってしまうタイプなので・・・・・・。
それでも、深海さんが〆切ギリギリに思いつくアイデアで、いつも原稿がさらにおもしろくなるから、信じて待っていたけど……! 完成原稿を読ませてもらうまで「この話、どうなるんだろう? ちゃんとゴールに着くのかな?」ってハラハラしてましたよ……。
だから、「これ、どうやってラストシーンにもっていくの?」みたいな打合せをやってたんですよね。
私は初代担当だったから、1巻の編集をしてる途中なのに、もう2巻のプロットが送られてきて、「深海さんって、しっかりした人なんだな」と思ってたよ! だまされてたよ!!(笑)
ぜんぜんしっかりしてなかったです! ただ、もともと3巻までは、イメージがあったんです! その先は書きながら考えたけど……がんばっても8巻くらいまでしかシリーズが続かないんじゃかな?なんて弱気なことを考えてた。 だから、8巻のあとがきで、「今までありがとう、後半戦です!」みたいなことを書いたんです。 そしたら、そのあとも読者のみなさんの応援のおかげで、もっと続きが出せることになって……気が付いたら16巻(てへ)。
けっこう続きましたね。 ……5巻で、ゆのが「いきなり七ツ星学園に行く」ってことになったときには、「そもそも七ツ星学園って、どのへんにあるの? そこまでどうやって行くの?」と、またしても現実にもどして。 ゆのが編集部メンバーと、ものすごい別れをしたかのように書いてあるけど、それなのに行った先が「となり町」だったらヤダぞって(笑)。
それで、「ゆのの町からはすごく遠くで、でも日本国内」ってことになったんです。 Oさん、本当にありがとう!
このつづきは、「深海ゆずは×歴代担当編集スペシャル座談会 第3回」で読んでね。
第3回でも、本編に負けずおとらずドタバタな「こちパっ!」制作のウラ話をお届けするよ!
お楽しみに!!