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超注目の新サバイバルシリーズ

『人生デスゲーム 命がけの生き残り試験』
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「すべてが思い通りになる人生」が
手に入るとしたら、きみはどうする?

親や先生に言われて勉強はしてるけど、
行きたい学校も将来の夢も、決まってない。
なんだかものたりない毎日。

そんなリョウのもとに、一通の招待状が届く。
それは、「選ばれた100人の小学6年生」だけが受けられる試験。
合格すれば、進学から、仕事、お金まで
「すべてが思い通りになる人生」が手に入るらしい。

しかし、会場に閉じこめられたリョウたち参加者に告げられたのは、
『試験に失敗すれば、人生を奪われる』
という恐ろしいルールだった!
合格者はたった1人。

降りかかる難問と強敵を前に、
この呪験<じゅけん>を生き残ることはできるのか――!?




3 命がけの競走

 マスク男の高らかな宣言とともにモニターが上に収納され、部屋の奥の壁がゆっくりとひらきだした。
「ルールはかんたん! 今、キミたちのいるその場所から部屋の奥にある『トビラ』まで走っていただき、トビラの中に入った者が試験合格となります!」
 マスク男はつづける。
 ひらかれた壁の奥、500メートル先に40個のトビラが並んでいるらしい。
 トビラひとつにつき、入れるのは1名のみ。だれかが入ったトビラは二度と開かない。
 制限時間は15分。しかし、すべてのトビラに人が入ったらその時点で試験終了となる。 
「試験と言っても、筆記試験ってわけじゃなく体力も使うのね……」
 あかねのつぶやきに僕もルールを頭にたたきこみながら「たしかに」と返した。
「また、トビラまでの道では左右の壁からインク入りのカラーボールが発射されます。それに当たった人はその時点で脱落です」
 マスク男が言うと、左右の壁の上のほうから発射口がズラッとあらわれる。
 ななめ下の床にむけられたあの発射口から一斉に発射されたら、避けるのはかなり大変そうだ。
しかも1個でも当たったら脱落。
床にはまるで目印のように、トビラへ続く黒のラインがまっすぐ5本引かれている。
トビラまで500メートルなら、おそらく全速力で走れば3分もかからないだろう。
だけど、ボールを避けながらになるとまっすぐは走れないし、足は止まるだろうし、でも止まったらボールが当たるからそこでも避けなきゃいけないし……。
頭の中でいろんなシミュレーションが進んでいく。
「では、そろそろ始めましょうかね。みなさんのご活躍を楽しみにしております」
 最後に大事なことなので、もう一度言いますね。とマスク男は笑う。

 ――――呪験は落ちたら、終わりです。

「今後、試験を放棄したとみなされる者はその時点で強制的に『脱落』とします! なので、走らないとかナシですよ? では、みなさんの分析力に期待して、第1次試験スタート!」
 宣言と同時にマスク男は手品のように消え去り、天井の電光掲示板に制限時間のカウントが表示される。
 そして会場内になぜかアップテンポの【ドレミのうた】が爆音で流れはじめた。
その瞬間。
「うあああああああああああ!」
 一斉に左右から大量のカラーボールが勢いよくふりそそぎ、あちこちから悲鳴が上がる。
 どうやらカラーボールが当たった人は、足もとの床が抜けて下に落下していく仕組みらしい。
 まだ開始してからほんの数秒なのに、ボールに当たった人がつぎつぎ消えていく。
 発射されるボールの数が予想以上に多く、まわりは一気にパニックになってしまった。
「まずいまずい! どうしよう!?」
 頭を守りながら奈央が聞いてくる。
 こうしているあいだにも、どんどんボールは飛んできて参加者の人生を奪っていく。
「このままここにいたら試験放棄と見なされかねない! とにかく進むんだ! 走れ! 走れ」



 マスク男の言葉が頭をよぎって僕がさけぶと、混乱していたみんなも一斉に走りだす。
 立ち止まっていたら、自分の人生が終わるのを待つだけ。
 でも、走り出したからと言ってそのままトビラまでたどりつけるわけもない。
 ひとり、またひとりと消され、そこらじゅうで悲鳴と怒号がとびかう。
 ようしゃなくおそいかかる大量のカラーボール。
 これをぜんぶよけて500メートル走り切らなければ人生が終わる。
 しかも制限時間はたったの15分……状況は完全に最悪だった。
 今のところまだ僕が生き残っているのは、単純に運がよかっただけだろう。
 混乱のせいでいつのまにか秋歩と奈央とは、はなればなれになってしまった。
「もう! キリがない!」
 声を上げながら、あかねがギリギリでカラーボールをかわす。
「この音楽のせいで、なんだか変な運動会の競技に参加した気分だ! これ、いっそボールが発射されるリズムにあわせて踊りながら走った方が、ボールをよけやすいんじゃないか?」
 一虎はじょうだんまじりに言うけど、その表情にはもう余裕がなかった。
 すると、すぐそばでケンカのような声がひびいてくる。
「おい! こら! 引っ張るな!」
「どけよ! じゃまだ!」
 顔をむけると、罵声を飛ばしあいながらおたがいの足を引っ張る参加者のすがたが見えた。
 足をひっかけて転ばせたり、えりをつかんでうしろにひきずりたおしたり……。
そこかしこでおこなわれている。
まるで地獄のような光景だった。
そんな中、僕やあかねや一虎が必死にボールを避けながら進んでいるうちに、どんどん通過者が出てきていた。
「良いペースで通過者が出てきています! 残りのトビラは20個! みなさん急いで!」
 マスク男が楽しそうに実況している。
天井の電光掲示板には残り時間と残りのトビラの数が映しだされていた。
「もう半分になったのか……」
 一虎が「まずいね、これは」と汗をぬぐう。
 まだ開始5分だというのに、僕らがボールに苦戦して少しずつしか前に進めていない状況の中、どんどんゴールする人が出てきている。
 僕の視線の先では、本当にダンスを踊るみたいにボールをかわす人がいたり。
 ボールを割らずにつかんで機械に投げ返す人がいたり。
おびえながらも幸運なことに当たらずに済む人もいたり……。
強者たちが、様々なやり方で思い通りの人生を勝ち取るために突き進んでいた。
足止めをくいながら、まだ半分も進めていない僕らとの差がハッキリと出ていた。
「このままじゃ、僕らはみんなここで――――」
 なんとかしないと。と、僕がひとりつぶやいた時だった。
「お、つぎの獲物はっけ~ん!」
 いきなり視界の端から誰かが体当たりしてきて、僕とあかねがその場に転んでしまう。
全身に痛みが走る。
それでも、地面にたおれていたらボールが当たってしまうので、すぐに僕は立ち上がった。
けど、あかねは転んだ時の痛みがひどかったのか、顔をしかめて立てないでいた。
「あかね!? どこかケガでも……」
 あわてて駆け寄ろうとした、その時。
「リョウ! あぶない!」
 一虎が僕の肩をつかんで止める。
 その瞬間に、誰かの足がすごい勢いで僕の鼻先をかすめた。
「おっしいなあ。止められなきゃ顔面にヒットしてたのに」
 その声にふりむくと、そこには。
「神崎、氷河……」
 まるでゴミでも見るような冷たい目で僕らを見下ろす神崎がいた。
「あん? なんで俺の名前を……って、そいつから聞いたのか」
 神崎は一虎を見て、フンと鼻を鳴らした。
「いきなり、なにするんだよ! お前に妨害されるおぼえは――――」
 僕が言いかけると、あせった顔をした一虎が「待て」とさえぎってくる。
 一虎はそのまま神崎から目を離さずに、となりにいる僕にだけ聞こえる声で耳打ちしてきた。
「こいつ、ヤバいにおいがプンプンする。いきなりリョウとあかねを転ばせてきたのも意味わかんないし、とにかく早くここから逃げ――――」
「逃がすわけねえだろ」
 一虎の言葉をさえぎるように神崎が言う。
 空気が一瞬でピンと張りつめた。
「つまんねー。マジでつまんなすぎ。どいつもこいつも退屈すぎて全然楽しくねえなあ」
 言いながら神崎は天井を見上げた。
「だいたい退屈すぎんだよこの試験。張り合いがねえから、てきとうにほかの参加者で遊びながら進んでんのに、競走相手すらザコでつまんねーとかマジで終わってんだろ」
 どいつもこいつもバカすぎ、弱すぎ。と神崎は吐き捨てる。
 この言葉から察するに、神崎は自分が楽しむためだけにほかの人を脱落させているようだ。
 そして、どうやら僕らは次のターゲットに認定されてしまったらしい。
 まずいぞ……さっきの体当たりからして、おそらくこいつとんでもない力を持ってる。
 くわえて他人を蹴落として楽しみながら進めているこの現状。
 これは力だけで進める試験じゃない、だとすると神崎は頭もそうとう良いのかも。
 だとしたら、どうする? どうすれば、この場から逃げ切れる?
 僕が口元に手を置こうとした瞬間、あかねが神崎のすきをついて走り出す。
 けど、この場から逃げ去ろうとした彼女を神崎はいともかんたんにつかまえて、床に投げた。
 苦痛に顔をゆがめるあかねに神崎は笑う。
「逃げるなんて無理だぜ? 力も頭も俺にかなうやつなんていねえんだからな」
 言いながら神崎はあかねにゆっくりと近づいた。
「ちょうどいいや……」
 神崎は薄気味悪い笑みを浮かべる。

「お前の人生を一番に終わらせてやろう……」

 その言葉にあかねの目がハッと大きく見開かれる。
 あかねは……ようやく立ち上がれたけど、傷みがひどいのか逃げられそうにもない。
「逃げるなら今のうちだぞ……? つかまったら、人生終わりだぞ?」
 ゆっくりと神崎の手があかねに伸びていく。
 僕はそれを見て、体がふるえる。
 ダメだ……力じゃかなわない……かなうわけがない……ダメだ、ダメだ、ダメだ。

「……うう、うわああああああ!!」

4 キミを助ける理由

 気づけば、僕は叫びながら神崎に突進していた。
「はあ? なんだお前。じゃまだ、どけよ」
 神崎の腰にしがみついて、必死に押し返そうとするけどビクともしない。
 そりゃそうだ。
 力でかないっこないって、体当たりされた時からわかっていた。
「ちょっ! リョウ、何やってんの!?」
 あかねの声が背中にかけられるけど、僕は振り返る余裕もないまま口をひらく。
「そんなの僕もわかんないよ!」
 そう。体が勝手に動いた。としか言えなかった。
 自分でもバカな選択をしたなと思ってる。
 力じゃかなわないってわかってるのに力勝負するなんて、わざわざ負けに行くようなもんだ。
 でも、それでも……。
 あそこでなんにもしないまま終わるのは、なんだか許せなかった!
「う、おおおおおお……」
 全力をこめて、神崎をあかねから遠ざける。
 必死に足をふんばって押し返す。
 ……けど。
「もういいか? 時間もだいぶ過ぎちまったし」
「え?」
 神崎のあきれたような声とともに、僕の体がグッと持ち上げられる。
「うわっ!」
「てきとうにぶん投げりゃ、ボールが当たって脱落すんだろ。じゃあな、ザコくん」
 僕の足が宙に浮いて、神崎が投げ飛ばそうとした瞬間!

「させるかぁ!!」
 声とともに僕の体がはじかれて、地面に落ちる。
「……え?」
 反射的に体を起こした僕の視線の先には、一虎の背中があった。

「一虎! ……なんで!?」

 どうやら神崎は、僕の体を持ち上げた時に、一虎に体当たりされてバランスを崩したらしい。
 僕の体が床に落ちると同時に、一虎はそのまま神崎と肩をつかみあっていた。
「いやあ……ボクも全力出せば意外にいけるもんだねえ」
 一虎は微笑みながら言う。
 逆に神崎は、少しおどろいたような表情をしていた。
 信じられないことに、一虎はじょじょに神崎をうしろへ押し返していく。
「なんなんだこいつ……!!」
 あせった神崎は歯を食いしばって一虎を押し返そうとするけど、その体はゆっくりとうしろへ押されていった。
 まさか、一虎が神崎に押し勝つなんて……。
 でも、このままじゃ!
「一虎! もういいから! このままじゃカラーボールが当たっちゃうぞ!」
 ふたりの体のそばをビュンビュンとボールが飛び交っている。
 もうふたりはいつボールが当たってもおかしくなかった。
「このやろう! ふざけた真似しやがって!」
 さすがの神崎も、なりふりかまわず必死に一虎をふりほどこうとする。
 けど、一虎はどんなにふりまわされても手を離さなかった。
「なにやってんだよ! 一虎! このままじゃ神崎と一緒にお前も脱落しちゃうぞ!」
「……ダメだ! 気を抜いたら一気にやられる! 今ボクがやられたら、そのいきおいでリョウとあかねも脱落させる気だ、こいつは!」
 だから死んでも離さない! と一虎は必死な声で叫んだ。
「でも、このままじゃ一虎が脱落しちゃうだろ! そしたら……」
「いいんだよそれで!」
 僕の言葉をさえぎって、一虎はこっちを向く。
 必死の顔でふんばっていた一虎は、小さな笑みを浮かべた。
「ここで全員やられるくらいなら、ボクがやられてふたりが助かるほうがいい……リョウが助かるほうがいい!」
 そう言って笑う一虎の顔は、誰よりも優しく見えた。
「なんで、そこまで……僕ら、今日会ったばかりだろ? どうして自分の命をかけてまで僕なんかを助けるんだよ!」
 僕の声はふるえていた。
けど、一虎はずっと笑っていた。
「そんなの、かんたんだよ」

 ――――リョウが、僕と話してくれたからさ。

「言っただろ? 楽しく会話してくれたのはリョウだけだったって。ボクさ、すごくうれしかったんだ」
「そんな……それだけで」
 僕が言うと、一虎は笑って首を振る。
「ボクにとっては大事なことだったんだよ……ちゃんと話せるやつなんて、ずっといなかったからさ。ようやく出会えたって思ったんだ。だから、キミは僕にとって特別なんだよ」
 その言葉の意味や重さは、僕には計り知れない。
 今でもやっぱり、その身を犠牲にしてでも僕を助ける一虎が理解できない。
 けど、一虎が本気で僕を助けようとしてくれているのだけは、しっかりと伝わってきた。
 その言葉がウソじゃないってこともハッキリとわかった。
 すると、一虎は「というわけで~」といつもの調子にもどる。
「これはボクからのお礼だよ。リョウ」
 一虎はさらに力をこめて、神崎を押し返す。
「お礼をしなきゃ気が済まない性格なもんでね!」
 さらに一歩押し返して、一虎はさけんだ。

「――――キミの命を救えるなら、この命だってくれてやる!」

 一虎の力に負けて、神崎は「くそっ!」と舌打ちしながら押されていった。
 一虎は、力ウィふりしぼって叫ぶ。
「リョウ! 最後に伝えとく! きっとキミならこの試験のクリア方法に気づけるはずだ! パズルのピースはもうそろってる! 今いる場所が最後のヒントだ!」
「どういうことだよ! 一虎! もういいから、こっちにもどってきてくれよ!」
 僕が言っても一虎は首を縦にふらない。
 必死に神崎を押さえ込んで、そして僕をまっすぐ見てこう言った。
「たぶん、これは単純な体力試験じゃない! きっとなにかカラクリがあるはずだ! リョウ! キミならきっとその答えを導き出せる! キミならできる! 信じてる!」
 だから。と一虎は笑った。

「ボクのぶんまで、がんばってくれ。優勝候補!」



 そう言った瞬間に――――一虎のほほにカラーボールが当たる。
 べチャッと赤いインクが顔に広がったまま、一虎は僕を見て笑っていた。
「さよなら。またどこかで会えたら、いいな」

 そう言って、一虎は床下に消えていく。
 悲鳴ひとつあげずに、彼は笑って人生の終わりをむかえてしまった。

「一虎ぁああああああ!」

 僕の声はむなしく響き、何事もなかったかのように一虎をのみこんだ穴がふさがれる。
 そこにあるのはなんのへんてつもない床だった。
「……ちっ。あの野郎。もう遊んでる時間もねえじゃねえか」
 神崎は電光掲示板を見上げて舌打ちすると、僕らを一度にらみつけてトビラの方へ走っていく。
 マスク男は今も楽しそうに実況している。

「試験終了まで、あと5分です!」

残された僕とあかねは、そこから動けなかった……。

このつづきは、5月9日発売の本をチェック!
ぜひ手にとってみてね!!

 



本の情報
 
タイトル:人生デスゲーム 命がけの生き残り試験
作:あいはらしゅう 絵:fuo
ISBN:9784046323583
出版社:KADOKAWA
判型:新書
ページ数:192ページ
定価:858円 (本体780円+税)
発行年月日:2025年5月9日