編集部からのお知らせ

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角川つばさ文庫の伝説級ヒット☆『いみちぇん!』つづきのお話!
『いみちぇん!!』が好評発売中!

中学生になったモモちゃんたちが、お役目復活!?



ぜひ夏休みに読んでみてね♪

夏休みスペシャル企画✨
『いみちぇん!!』の書き下ろしSSがよめちゃう!!

角川つばさ文庫の伝説級☆人気シリーズ『いみちぇん!』のつづきのお話、
『いみちぇん!!』のスペシャルショートストーリー!

超豪華なあさばみゆきさんの書き下ろしSSを楽しんでね!

さらに、『いみちぇん!!廻』のSSも前後編でたっぷり読めちゃう!
『万宙とミツと銭湯と』
・前編:公開中
・後編:2026年7月21日(火)11時公開予定

ぜひチェックしてみてね♪



万宙と匠がラーメン行く話

☆『いみちぇん!! ふたたび、ひみつの二人組』のあとのお話だよ♪

<あらすじ>

中学卒業後の春休み、寮への引っ越し準備を進めていた万宙は――?


 近ごろ息をするのが楽だと、しみじみ思う。
 自由がすぐそこに待っていると思えば、七面倒くさい高校の手続きも、むしろ楽しいくらいだ。

「えっ、万宙くん、もうアルバイト始めてたの? しかもこのクレープ屋さんで!?」
 モモに聞かれて、オレはうなずく。
「そー。こっちでは春休み中だけだけどさ。金貯めて、バイク買う」
「バイク!」

 書道部の卒業生メンバーで、いつものクレープ屋。
 高校生活バラバラになるメンバーとの、最後の集会だ。

 ねらっているのはホンダのREBEL250。
 中古サイトを探してて、ひとめぼれしたんだ。カスタムしがいのある車種らしい。
 オレが入る高校は寮生活だけど、バイトは可だから、がんばりゃ買えるはず。

「バイクって、車より危ないんじゃないですか?」
「だって、そこまで免許待ってらんないしー」
 鈴乃ちゃんに水をさされて、オレは口をとがらせた。

 矢神はスマホに表示されたバイクを眺めて、「かっこいいな」と一言。おしまい。
 どうせ、モモを乗せるなら車だなとか考えてるんだろ。

 モモは、バイク買ったら見せてねなんて、オレにニコニコしてる。
「万宙くん、引っ越しはあさってだったよね? 手伝いに行く?」
「あー、ぜんぜんいらね。宅配便で荷物送っちゃうから、当日はほぼ手ぶら。寮は家具備えつけだからさ。今日の夜、服とかまとめて、明日コンビニで出したらおしまーい」
「そっか。……じゃあ、当日見送りに行ってもいい? りんねちゃんたちも行きたいって」
 
“サプライズで来ちゃった~”をやんないのは、モモのマジメな性格もあるんだろうけど、もしオレの母親が来てたらって、気ぃつかってくれてんだな。
 オレは、ほんとにいいよと背もたれに体を倒した。
「二度と会わないとかじゃねーもん。夏休みとかくらい、帰ってくるかもだし」

 そう笑いつつ、二度と会わないような気もする。
 モモたちと一緒にいると、そっち側にいられる自分が嬉しいと同時に、時々ふいに自分だけ場違いな気がして、無意味に申し訳ない気持ちになる。

 ポケットに手をつっこみ、カードケースに指を這わせる。
 そこに、モモからもらった白札が挟んである。
 これがあれば、なんとなく、生きていける気はしてる。
 そもそも、母親に「帰ってくんな」って言われる可能性のほうが高いしさ。

「まぁでも、バイトしまくる予定だからなー」
 先回りで予防線を張っておく臆病者だ。
「佐和田の『帰ってくるかも』は信用ならん。おれが東京出るとき、おまえも来いよ」
 矢神はあきれてる。
「さびしいのは、こちらだけみたいじゃないですか」
 そして鈴乃ちゃんは、オレの頭を読んだように、めずらしくデレた。



 ノックして数秒待ってから、ドアノブにカギを差し込む。
 一応様子をうかがいつつドアを開けると、誰もいなかった。

 ホッとして、今のうちにと段ボール箱に荷物をしまい始める。
 教科書はいらねー。置いてったら、捨てるかネットフリマで売っといてくれんだろ。
 服と、中等部の授業で使っていたタブレットを詰め、それから――。
 教科書のあいだに隠してあった、封筒を取り出す。

 中には、丁寧にしまっておいた、折り紙の人形たち。
 鈴乃ちゃん、モモ、矢神、オレ。
 そしてりんね、アキ、桜、玲連。
 みんな手をのりで貼りつけてあって、びろ~んと横に長くなってる。

 ――これ、お部屋にかざってね!

 あれは、中二の時の誕生日だ。
 うれしそうに瞳を輝かせるりんねの顔が、頭によみがえる。

 ――金の折り紙は、一セットに一枚しか入ってないんだよ。だからトクベツ!

 みんなに真ん中で手をつながれて、きらきら輝く、金ホイルの髪の人形。
 ネコみたいな顔で笑う「オレ」。
 それを見つめる今のオレも、無意識にほほ笑んでる。

 ドアの開く音に、ビクッと肩が跳ねた。
「なんだ、いたの」
「おかえりー」
 母親は一人だ。今日は彼氏と一緒じゃないみたいだ。

 オレは急いで折り紙人形を箱の上に置き、フタをしめておく。
「夕飯の弁当、もらってきたよ」
「あっそ。一つだけ? あんたのは?」
「友達と食べてきた」
「へー」
 レンジで温めなおした弁当を、ちっちゃいテーブルに置く。
 母親はあからさまに不機嫌だ。
 めんどくさと思いつつ、こうやって向かい合うのも、もう、あと一日だしなと考え直す。
 楽になるなぁという感情と一緒に、この人は自分がいなくて大丈夫なのかなんて、余計なことまで頭に浮かんでくる。
 オレはまたポケットに手を入れ、カードケースをなでる。

「……あんたがいなくなると、さびしくなるね」

 耳を疑った。
「えー……? また別れたの? 彼氏と」
「別れてねぇよ」
 吐き捨てられて、「だよね」と曖昧な笑みを浮かべた。
「オレ、風呂入ってきていーい?」
 聞いても、もうテレビのワイドショーに気が向いてて、返事がない。

 オレは視界から静かに消えて、風呂へ逃げた。
 心臓が震えている。
 急になんだよ、とうめきながら、まだお湯にもなっていない冷たいシャワーを頭からかぶった。

 二間しかないアパートは、風呂から出たら、すぐそこが居間だ。
 母親は「次入る」とわざと肩をぶつけて通り過ぎ、大きな音で戸を閉めた。
 肩をなでつつ、オレは絶句した。

 ゴミ箱に、りんねたちからもらった誕生日プレゼントが、ズタズタに破られて、捨てられてる。
 ヒザをついて、中から取り出した。
 腕の部分が丁寧に一人ずつちぎられて、めちゃくちゃになってる。
 りんねの笑顔、モモの笑顔、オレの笑顔も。
「やっべ」
 破片をテーブルにならべる指が、震えてる。血の気が引いて青くなってっし。
 しくじった。さっき、見られてたんだ。
 ここまで一年、ずっと気づかれずに隠せてたのに、最後の最後に油断した。
 まぶたを下ろし、唇に歯を立て、こらえようとする。
 けど、気づいたらドンッと風呂の戸に拳を打ちつけてた。

「……ねぇ。あのさ、この折り紙、なんで」

 中のシャワーの音が止まった。
「ハ? いらないだろ、あんなの。寮にあんなの持ってったら、高校生がって笑われるよ」
「いるよ。いた」
 中からデカいタメ息が聞こえてくる。
「あんたはいいよねぇ? 毎日楽しそうでさぁ。あたし疲れてんだよ」

 以上。おしまい。

 また、シャワーの音が始まった。



「あれ、万宙じゃん。どしたの」
 傘を深く傾けていたのに、見つかった。
 目立つ髪色を今は恨む。

 中学でツルんでいたメンツが、ぞろぞろ歩いてくる。
「コンビニ」
「夕メシ買いに? オレたちこれからラーメン屋。一緒に行こーぜ!」
「あー……いいわ、オレもう食った」
「いいじゃん、ラーメンは別腹だろー」

 耳障りな音で笑いながら、オレの傘をひょいと持ち上げてくる。
 サイアクだ。
 オレの眼光に、みんなギョッとして後ずさった。
「……なんだよ。誘ってやっただけだろ」
「え、なに? カノジョにふられたとか?」
 せっかく茶化して流そうとしてくれたのに、一緒に笑って流す心の余裕がない。
 出てきた言葉は、「うぜぇ」だ。

「ハァ? 万宙、なにマジ切れしてんだよ」
 傘をよけたヤツが、一歩詰めてくる。
 めんどくさ。マジでうざい。
「ほっとけよ」
 手を払った弾みに、傘が手を離れて地面に落ちる。

 ザッと冷たい雨が顔をぬらす。

「バカくせぇ。消えろ」

 親に折り紙人形をちぎられて、ヘソ曲げて家から逃げてくる男子中学生? いや、もう高校生か?
 わかんねぇけど、とにかくバカくせぇ以外のなんでもない。

 自分に吐き捨てたのに、相手はブチ切れて、えり首をつかんでくる。
 あー、殴られっかな。でも殴られて、そっちが痛い方がマシな時ってあるよな。
 どーぞどーぞ。

 無抵抗で目を閉じると、

「やめろ」

 低く、厳しい声が間に入った。

 えりをつかむ手首を、さらに上からつかんむ手。
 たどると、黒髪の、イケすかないほど整った顔立ちのイケメンが、静かな目で相手を見すえてる。

「矢神」

 こいつが剣道部大将をやっていたのを、みんな知ってる。そして、決してそれだけじゃない威圧感。
 えりを放されて、オレは後ろによろめいた。

「なんだか分からんが、佐和田が何かしたんだろ」
 みんな、うんとかまぁとか微妙な返事をして、矢神から距離を取る。
「おれの顔を立てて、散会してくれ。またな」
 矢神は傘を拾い、どうともないような顔で、オレに渡してくる。
 その間に、みんな二人から離れ、駅の方へ歩き出していた。

 けどオレは、いつもみたいにへらっと笑う気にもなれない。
「じゃあな」
 逃げようとしたら、佐和田、と呼び止められた。
「……ごめんだけど、オレ今、機嫌よくできないんだわ。おまえとの関係こじらせたくないから、さっさと帰らせてくれる?」
「おまえの家は、そっちじゃないだろ」
「ほっとけよ」
 にらみつけたところで、矢神にはちっとも効いてない。そのまま背を向けたら、

「万宙」

 初めて、下の名前で呼ばれた。
 そのせいで、うっかり立ち止まってしまった。

「ほうっておきたいが、今のおまえをほうっておいたら、後でモモに叱られる」
「ハー?」
 心底ウザいが極まって、思わずふり向いた。

 すると矢神は、ポケットから出したチケットをオレに突き出した。
「実は今、世話になった書道の先生にあいさつしてきた帰りだ。食事券をいただいた。これでおごってやる」
「ハァア?」
「モモと二人で食べに行きなさいと言われたんだ。だが今はたぶん、こっちのほうが正解だろ」
 頭の中で、モモがうんうんうなずく姿が思い浮かんでしまう。

 オレはしばし、矢神をにらんで立ちつくしたけど――。
 結局、大きな息をついて、両肩を下げた。



「ラーメン……」
「嫌いな人間いないっしょ」
「食事券使えないだろ、ここ」
「だってラーメン食いたかったんだもん。そのチケット、モモと食べに行くのに使って、オレにはふつうにおごればいいじゃん」

 オレはカウンターから出された、ごてごてのトンコツラーメンのチャーシューネギだくトッピングを受け取り、ラーメンをすする。
 矢神はあっさり醤油ラーメンだ。

 オレは話をふらない。
 矢神は元から無口だ。
 黙々とラーメンをすすっているうちに、硬く縮こまっていた内臓が、すこしほぐれる。
 バカじゃねぇの。ふつうにウマいでやんの。

「母親か?」
 矢神が、トンコツか醤油かくらいの淡白な調子で聞いてきた。
「まぁ、そう」
 だからそのまま返せた。

 ポケットに手をつっこみ、ビリビリに裂かれた残がいを、テーブルにのせる。
 矢神はそれを手に取り、しばらく眺めた。
 そしてお互い、また無言になる。

「……佐和田は、そのうち東京にもどってくるつもりはあるのか?」
「なさそ。矢神は?」
「資金がたまったら、東京に工房を作るつもりだ」
「工房~? なにそれ、モモのそばにいたいからかよ」
 冗談まじりに聞いてみたら、匠は麺を入れようとしていた口を閉じた。
 そしてスイッと目をそらす。

「……悪いか」
「いや、照れんなよ、そこで」
 耳まで赤くなってやんの。
 さっきのあのド迫力の威圧感はどこ行ったんだよ。
 赤くなったかわいらしい横顔を、オレは頬杖をついて眺める。
 モモはこういうとこが好きなんだろうなぁと、どうでもいいことを考えながら。
 ホント、こいつらといると、毒気を抜かれてしまう。

「あーあ。オレも矢神みたいに手に職あったら、稼ぎやすいんだけどなー。寮に移ったら、なんのバイトしよっかな」
「ヤバイのはやめておけよ」
「あーね。オレ、バイク買うんだ。ホンダのかっこいいやつ」
 昼間に話したのは分かっていても、もう一度言う。
「そうか」
 矢神は短く返してくる。
「すげぇよな、自分で稼げるようになるって」
「ああ」
 いつもより丁寧に相槌を返してくれるのが、ムカつく。なのに嬉しいんだよな。
 バカくせ。オレは心の中でつぶやく。
「稼げたら、なんでも自分でできるようになるんだもんなー。バイクがあったら、どこでも、気が向いたとこにひゅんって行けるじゃんさ?」
「東京にも、三重にも来られるよな」
「高校から遠いっつの。何時間かかんだよ」
「何時間かかってもいいだろ。道を走ってれば、いずれ着く」
「そりゃ着くだろうけど、ケツ痛くて無理だろ」
「佐和田は根性がない」
「なんで中途半端にまた佐和田に戻ってんだよ。万宙でいいよ。照れ屋さんかよ」
「………………」

 矢神はまた黙ってラーメンを食べることに集中する。
 耳が赤い。

 オレは、今夜くらい不機嫌でいようと思ったのに、とうとう笑ってしまった。



 寮に入って二日目。

「佐和田くん、おかえり。お手紙届いてるわよ」
「ありがとーございまーす」

 受け取った封筒には「速達」の赤い文字。
 やたらと達筆なこの文字は、書道部で散々見た。矢神の字だ。

 食事のチケット? そのくらいしか心当たらないけど、モモと食べに行けばいいのに。
 封を手でちぎって中を覗き込み、オレは体の芯が震えた。

 金色のホイルの髪の人形が、見えた。

 りんねたちからのプレゼントを、自分で捨てるのは嫌だ。
 けれど、あんな状態になったのを持って帰って、また目にするのも嫌だ。
 それで、ラーメン屋に、わざと「忘れて」きたはずだったのだ。
 ……あいつ、持って帰ってたのか。

 引っぱりだしてみたら、モモと、矢神と、りんねと――、みんな繋がっている。

 あんなにぐちゃぐちゃだったのに、シワ一つない。
 ちぎられたところにうっすら線は入っているが、きれいにつながっている。
 裏返してみたら、薄い和紙で貼り合わせてあるらしい。

「マジで、職人すぎだろ」

 声まで震えてる。
 やべ、とうめいて、自分の部屋に駆けこんだ。
 まだ荷物も片付いてない部屋の段ボール箱をよけて突っ切り、備え付けの机の前に、テープで留めてみた。
 カードケースの白札も、その下に並べてみる。
 それからイスに座り、ひざを抱えて、その光景を眺める。

 視界がうるんでボヤけてきたから、ひざにおでこを押し当てて、しばらく泣いた。
 ここにはオレ以外、だれもいない。好きな時に好きなだけ、泣くのも許されてる。
 金を貯めるのも、勉強するのも、友達を作るのも、バイクを買って好きなところに行くのも、みんな、ぜんぶ許されてる。

 大事な宝物を、机の前に飾るのも――。

 しゃくりあげながら、ノートをちぎって、手紙を書き始める。

 こっち、すげー気楽。超自由。バイト先も今日決まった。
 三重のおいしいラーメン屋、調べといて。

 バイクで誘いに行ってやるよ、匠。

『万宙とミツと銭湯と』後編につづく

(後編は2026年7月21日11時ごろ公開予定!)


『いみちぇん!』シリーズのみんなの妹、藤原りんねが中学生になって、ミコトバヅカイに!?
『いみちぇん!!廻』シリーズも大好評発売中!


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わたし、藤原りんね。
ちょっと変わったものが視える以外は“ふつう”の中学一年生。
平和な学園生活を送りたいから、
みんなの前では、“ふつう”のフリをしてるんだ。

だけどあるとき、クラスに「悪いもの」があらわれて――
友達を消しちゃった!?

モモお姉ちゃんの意志を継いで、
わたし、みんなを守るために戦うよっ。


想いは廻る。きずなは消えない――
今度はわたしが、「ひみつのお役目」の主さま、はじめます!

『いみちぇん‼廻⑤』は2027年春に発売予定!



『いみちぇん‼廻』シリーズ完結巻!

千年以上の時を超えて、ミコトバヅカイと文房師たちにふりかかる、あらがえない“業”。
姿を消したモモお姉ちゃんのゆくえは――?
巡り廻る物語のラストを見とどけよ!

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